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猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状・治療・費用を獣医師が解説【最新治療情報】
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猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状・治療・費用を獣医師が解説【最新治療情報】

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監修: pet-dock獣医師監修チーム

猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状・治療・費用を獣医師が解説【最新治療情報】

猫伝染性腹膜炎(FIP)はかつて致死率ほぼ100%でしたが、現在は抗ウイルス薬(GS-441524・モルヌピラビル等)の登場で80〜90%以上の寛解が報告されています。治療費は84日間で50〜150万円以上と高額になるケースが多く、ペット保険の活用が重要です。ウェット型(腹水)とドライ型で症状が異なり、早期発見が予後を大きく左右します。

この記事のポイント

  • FIPは猫コロナウイルス(FCoV)の変異によって発症する致死的な疾患だが、近年の新規治療薬の登場で治療の可能性が広がっている
  • ウェットタイプ(滲出型)とドライタイプ(非滲出型)の2つの病型があり、症状が大きく異なる
  • GS-441524やモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬が治療に使われ、高い寛解率が報告されている
  • 治療費は84日間の投薬で50万〜150万円以上と高額になるケースが多い
  • 早期発見・早期治療が予後を大きく左右する

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猫伝染性腹膜炎(FIP)とはどんな病気か

猫伝染性腹膜炎(Feline Infectious Peritonitis: FIP)は、猫コロナウイルス(FCoV)が体内で変異することによって発症する全身性の炎症疾患です。猫の感染症の中でも特に致死率が高く、かつては「不治の病」とされていましたが、2019年以降に抗ウイルス薬の有効性が報告され、治療の道が開かれました。

猫コロナウイルス(FCoV)とFIPの関係

猫コロナウイルス自体は多くの猫が保有しており、通常は無症状か軽い下痢を起こす程度です。しかし、ごく一部の猫(感染猫の約5〜10%)でウイルスが変異し、マクロファージ(白血球の一種)内で増殖する能力を獲得すると、FIPを発症します。

項目 猫コロナウイルス(FCoV) FIPウイルス(FIPV)
感染率 多頭飼育環境で40〜80% FCoV感染猫の約5〜10%
症状 無症状〜軽度の下痢 全身性の重篤な炎症
感染経路 糞口感染(トイレの共有等) 体内でFCoVが変異して発症
致死率 低い 未治療ではほぼ100%
猫同士の伝染 する(FCoVとして) FIPとしては基本的にしない

重要: FIPは「FIPウイルスが猫から猫に感染する」病気ではなく、各猫の体内でFCoVが変異して発症する病気です。FIPを発症した猫と同居しているからといって、他の猫が必ずFIPになるわけではありません。


FIPを発症しやすい猫の特徴

FIPはあらゆる猫に発症する可能性がありますが、以下の条件に当てはまる猫はリスクが高いとされています。

高リスク因子

  • 年齢: 6か月〜2歳の若齢猫に最も多い。10歳以上の高齢猫にも見られる
  • 飼育環境: 多頭飼育環境(ブリーダー、猫カフェ、シェルター等)でFCoV感染率が高い
  • 純血種: アビシニアン、ベンガル、バーマン、ラグドール、レックス種はリスクが高いとする報告がある
  • ストレス: 環境変化(引っ越し、新しい猫の加入、手術後等)がきっかけになるケースが多い
  • 免疫状態: FIVやFeLV感染、免疫抑制状態の猫

FIPの2つの病型 -- ウェットタイプとドライタイプ

FIPにはウェットタイプ(滲出型)とドライタイプ(非滲出型)の2つの病型があり、症状も進行速度も異なります。実際には両方の特徴が混在する「混合型」もあります。

比較項目 ウェットタイプ(滲出型) ドライタイプ(非滲出型)
頻度 全体の約60〜70% 全体の約30〜40%
主な症状 腹水・胸水の貯留 眼・脳・肝臓・腎臓等の肉芽腫
進行速度 比較的速い(数日〜数週間) 比較的緩やか(数週間〜数か月)
外見上の変化 お腹が膨らむ、呼吸が荒い 体重減少、目の異常、神経症状
診断のしやすさ 腹水の検査で比較的容易 症状が多様で診断が難しい
予後(未治療) 数日〜数週間 数週間〜数か月

FIPの症状チェックリスト

FIPの初期症状は非特異的(他の病気でも見られる症状)なため、見逃されやすい特徴があります。以下のサインに注意してください。

共通の初期症状

  • 発熱が続く: 抗生物質に反応しない持続的な発熱(39.5度以上)
  • 食欲低下・体重減少: 徐々に食べなくなり、痩せてくる
  • 元気がなくなる: 遊ばなくなり、寝てばかりいる
  • 毛並みが悪くなる: グルーミングが減り、被毛がパサつく

ウェットタイプの症状

  • お腹が膨らむ: 腹水が溜まり、お腹がぽっこりする(体重は減っているのにお腹だけ膨らむ)
  • 呼吸が荒い・苦しそう: 胸水が溜まると呼吸困難になる
  • 陰嚢の腫れ: オス猫で陰嚢に水が溜まることがある

ドライタイプの症状

  • 目の異常: 虹彩の色が変わる、瞳孔の形がおかしい、前房出血(目の前面に血が溜まる)
  • 神経症状: ふらつき、痙攣、後ろ足の麻痺、首の傾き、眼振(目が揺れる)
  • 肝臓・腎臓の腫大: 触診でしこりがわかることがある
  • 黄疸: 白目や耳の内側が黄色くなる

上記のうち2つ以上に該当する場合、特に若齢猫では速やかに動物病院を受診してください。


FIPの診断方法

FIPの確定診断は難しいとされています。動物病院では以下の検査を組み合わせて総合的に判断します。

検査 内容 費用目安 特徴
血液検査(一般・生化学) 貧血、高タンパク血症、高グロブリン血症等の確認 5,000〜15,000円 A/G比(アルブミン/グロブリン比)の低下が重要な指標
猫コロナウイルス抗体検査 FCoVに対する抗体価を測定 5,000〜10,000円 抗体陽性=FIPではない点に注意
腹水・胸水の分析 貯留液の性状・タンパク量・細胞診 5,000〜15,000円 粘稠で黄色い滲出液が特徴的
リビエルタ試験 腹水の簡易検査 腹水検査に含む 陽性率が高いが特異性はやや低い
PCR検査 腹水・組織中のウイルスRNA検出 10,000〜20,000円 確定診断に近い精度
超音波検査 腹水・胸水・臓器の肉芽腫を確認 5,000〜10,000円 非侵襲的で有用
病理組織検査 組織の免疫染色でウイルス抗原を検出 15,000〜30,000円 最も確実な確定診断だが侵襲的

診断の難しさ

FIPの診断が難しい理由は以下の通りです。

  • FCoV抗体検査は「FCoVに感染したことがある」ことを示すだけで、FIPの発症を意味しない
  • ドライタイプは腹水・胸水がないため、血液検査と画像検査の所見を総合して判断する必要がある
  • 確定診断には組織の病理検査が理想的だが、生検にはリスクを伴う

FIPの最新治療 -- 抗ウイルス薬の登場

治療の歴史と転換点

かつてFIPは「診断=安楽死の宣告」に等しい病気でした。しかし2019年、カリフォルニア大学デービス校のNiels Pedersen教授らのグループが抗ウイルス薬GS-441524の有効性を報告し、FIP治療に革命が起きました。

現在使われている主な治療薬

薬剤名 種類 投与方法 治療期間 寛解率 備考
GS-441524 ヌクレオシドアナログ 注射または経口 84日間(12週間) 80〜90%以上 最も多くのエビデンスがある
モルヌピラビル(EIDD-2801) ヌクレオシドアナログ 経口 84日間(12週間) 70〜85%程度 経口投与のため投与しやすい
GC376 プロテアーゼ阻害薬 注射 84日間(12週間) 60〜70%程度 GS-441524との併用研究も

治療の流れ

  1. 診断確定: 症状・検査結果からFIPと診断
  2. 病型・重症度の評価: ウェット/ドライ/混合型、神経症状・眼症状の有無を確認
  3. 抗ウイルス薬の投与開始: 体重に応じた用量を設定
  4. 定期的なモニタリング: 1〜2週間ごとに血液検査で治療効果を確認
  5. 84日間の投薬完了: 途中で症状が改善しても自己判断で中止しない
  6. 経過観察期間: 投薬終了後3か月間は再発リスクのモニタリング

治療の注意点

  • 途中中断は再発リスクが高い: 84日間の投薬を必ず完了すること
  • 神経症状がある場合は用量を増やす必要がある: 脳への移行性を考慮した高用量投与
  • 眼症状がある場合も高用量が推奨される: 眼内への薬物移行を確保するため
  • 再発した場合は高用量で再治療: 初回治療量の1.5〜2倍で再開するケースが多い

FIPの治療費はどのくらいかかるか

FIPの治療費は高額になるケースがほとんどです。以下は一般的な費用の目安です。

費用項目 金額の目安 備考
初診料 + 検査費用 2〜5万円 血液検査・超音波・腹水検査等
GS-441524(84日間) 50〜120万円 体重・用量・製剤の種類による
モルヌピラビル(84日間) 30〜80万円 GS-441524より安価な傾向
定期モニタリング(血液検査等) 月1〜3万円 治療中2週間〜1か月ごと
入院費(重症の場合) 1日5,000〜1万5,000円 初期に入院が必要なケースあり
支持療法(輸液・制吐剤等) 月5,000〜2万円 脱水・食欲不振への対症療法
合計(84日間の標準治療) 50〜150万円以上 重症度・体重により大きく変動

費用を抑える方法

  • ペット保険: 一部のペット保険でFIP治療が補償対象になるケースがある。ただし免責事項を確認すること
  • 早期発見・早期治療: 症状が軽いうちに治療を開始した方が治療期間や追加治療のリスクを抑えられる
  • 動物病院への相談: 分割払い対応やクレジットカード決済が可能な病院も多い

ペット保険の詳細はペット保険の選び方ガイド、動物病院の費用全般は動物病院の費用ガイドも参考にしてください。


FIPの予後 -- 治療後の経過

治療を受けた場合

GS-441524による治療では、ウェットタイプの猫の80〜90%以上が寛解に至るという報告があります。ドライタイプ、特に神経症状を伴うケースでは寛解率がやや低下しますが、それでも60〜80%程度の寛解が見込めます。

病型 寛解率(GS-441524) 再発率 予後の特徴
ウェットタイプ 80〜90%以上 約10〜15% 治療反応が比較的早い
ドライタイプ(眼・内臓) 70〜85% 約15〜20% やや治療期間が長いことがある
ドライタイプ(神経型) 60〜75% 約20〜30% 高用量が必要、反応にばらつきあり
混合型 70〜85% 約15〜20% ウェット症状の改善が先行する

未治療の場合

抗ウイルス薬による治療を行わない場合、FIPの致死率はほぼ100%です。ウェットタイプは診断後数日〜数週間、ドライタイプでも数週間〜数か月で死に至ることがほとんどです。


FIPの予防は可能か

現時点で、FIPを確実に予防する方法はありません。ただし、FCoVへの感染リスクを下げることで間接的にFIPの発症リスクを低減できます。

実践的な予防策

  • トイレの清潔管理: FCoVは糞口感染するため、トイレは猫の頭数+1個用意し、こまめに清掃する
  • 多頭飼育の管理: FCoV抗体陽性猫と陰性猫の接触を減らす。可能であればトイレを分ける
  • ストレスの軽減: 環境変化を最小限にし、十分な隠れ場所と遊び場を確保する
  • 新規猫の導入時の検査: 新しく猫を迎える際はFCoV抗体検査を実施する
  • 免疫力の維持: 適切な食事管理と定期的な健康診断を継続する

よくある質問(FAQ)

Q1. FIPは他の猫にうつりますか?

FIPそのものが猫から猫に直接感染する可能性は極めて低いとされています。ただし、原因ウイルスである猫コロナウイルス(FCoV)は糞口感染で猫同士に広がります。FCoVに感染しても、FIPを発症するのは一部の猫に限られます。

Q2. FIPの治療薬は動物病院で処方してもらえますか?

GS-441524やモルヌピラビルは獣医師の判断のもとで処方される薬剤です。全ての動物病院で取り扱いがあるわけではないため、FIPの治療経験がある病院を探すことが重要です。かかりつけ医に相談し、必要に応じて専門的な病院を紹介してもらいましょう。

Q3. FIPと診断されました。治療費が高額で迷っています。

FIPの治療費は確かに高額ですが、適切な治療を受ければ高い確率で寛解が期待できます。分割払い対応の病院を探す、ペット保険の適用を確認する、クラウドファンディング等の方法も選択肢になります。まずは獣医師と率直に費用面について相談してみてください。

Q4. FIPの猫コロナウイルスは人間にうつりますか?

猫コロナウイルス(FCoV)は猫特有のウイルスであり、人間には感染しません。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とは全く別のウイルスです。飼い主さんが感染を心配する必要はありません。

Q5. FIPのワクチンはありますか?

海外では鼻腔内投与型のFIPワクチン(Primucell FIP)が存在しますが、その有効性は限定的とされており、広く推奨されていません。日本では未承認です。現時点ではワクチンによる予防よりも、FCoV感染リスクの低減と早期発見に注力することが現実的です。


まとめ

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、かつて「不治の病」とされていましたが、GS-441524やモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬の登場により、治療で寛解する可能性が大きく広がっています。

  • FIPは猫コロナウイルスの変異が原因で発症する。猫同士の直接感染は基本的にない
  • ウェットタイプ(腹水・胸水)とドライタイプ(肉芽腫・神経症状)の2つの病型がある
  • 持続する発熱・食欲低下・体重減少、お腹の膨らみ、目の異常は早期受診のサイン
  • 治療費は84日間で50〜150万円以上と高額だが、寛解率は80〜90%以上と高い
  • 84日間の投薬を完了することが治療成功の鍵。自己判断での中止は再発リスクを高める
  • 早期発見・早期治療が予後を大きく左右する

愛猫にFIPが疑われる症状がある場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。

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