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猫の炎症性腸疾患(IBD)の症状・診断・治療費を獣医師が解説
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猫の炎症性腸疾患(IBD)の症状・診断・治療費を獣医師が解説

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監修: pet-dock獣医師監修チーム

猫の炎症性腸疾患(IBD)の症状・診断・治療費を獣医師が解説

この記事のポイント

  • 猫のIBDは3週間以上続く慢性下痢・嘔吐・体重減少が主な症状
  • 組織型により4種類に分類され、最も多いのはリンパ球形質細胞性腸炎
  • 診断は除外診断+内視鏡下生検が必須。消化器型リンパ腫との鑑別が重要
  • 治療は食事療法・ステロイド・免疫抑制剤の段階的アプローチ
  • 検査費用は5〜15万円、治療は月5,000〜2万円が目安

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猫の炎症性腸疾患(IBD)とは?

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、腸粘膜に慢性的な炎症細胞浸潤が起こり、消化吸収障害を引き起こす疾患の総称です。中高齢の猫に多く、慢性下痢・慢性嘔吐の原因として非常にpopularな疾患です。

なぜ猫はIBDになりやすいのか

猫のIBDは明確な単一原因がわかっておらず、以下の複合要因が考えられています。

  • 腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)
  • 食物中の特定たんぱく質に対する免疫異常
  • 遺伝的素因(純血種に多い傾向)
  • 粘膜バリア機能の低下

人間のIBD(クローン病・潰瘍性大腸炎)との違い

人のIBDは若年発症が多いのに対し、猫のIBDは7歳以上の中高齢猫が中心です。また、人のように腸管が深く潰瘍化するケースは少なく、粘膜層の慢性炎症が主体となります。

猫のIBDはどんな症状が出る?

IBDの症状は炎症が起きている部位(小腸・大腸)によって異なります。

小腸型IBDの症状

  • 慢性的な嘔吐(週1回以上、3週間以上継続)
  • 水様〜軟便の慢性下痢
  • 体重減少(徐々に痩せてくる)
  • 食欲低下または異常な食欲亢進
  • 毛艶の悪化

大腸型IBDの症状

  • 粘液便・血便
  • しぶり(何度もトイレに行くが少量ずつ)
  • 排便回数の増加

混合型の症状

小腸型と大腸型の両方の症状が出るケースもあり、進行すると低アルブミン血症から腹水・胸水が貯留することもあります。体重が1kg以上減少している場合は重症のサインです。

IBDは何種類に分類される?

猫のIBDは腸粘膜の生検で確認される浸潤細胞の種類により、以下の4種類に分類されます。

分類 浸潤細胞 頻度 特徴
リンパ球形質細胞性腸炎(LPE) リンパ球・形質細胞 最多(70〜80%) 最も一般的。小腸型リンパ腫との鑑別が困難
好酸球性腸炎(EGE) 好酸球 10〜15% 食物アレルギー関連が多い
化膿性腸炎(好中球性) 好中球 少数 感染症の鑑別が必要
肉芽腫性腸炎 マクロファージ・類上皮細胞 予後不良のことが多い

猫のIBDはどう診断する?

IBDの診断は「除外診断+組織学的確定診断」という2段階で行われます。

Step1:除外すべき疾患

以下の疾患をまず除外します。

  • 食事性下痢・食物アレルギー
  • 寄生虫感染(ジアルジア・トリコモナス等)
  • 感染性腸炎(サルモネラ・カンピロバクター)
  • 甲状腺機能亢進症
  • 慢性腎臓病
  • 膵炎
  • 消化器型リンパ腫

Step2:必要な検査

  • 血液検査(CBC・生化学・T4・葉酸・ビタミンB12)
  • 糞便検査(寄生虫・細菌)
  • 腹部超音波検査(腸壁の肥厚評価)
  • 内視鏡または開腹による腸粘膜生検
  • 組織病理検査・免疫染色・クローナリティ検査(PARR)

慢性下痢や慢性嘔吐が続く場合は猫の慢性下痢の原因猫の嘔吐の記事も合わせて参考にしてください。

IBDと消化器型リンパ腫はどう見分ける?

これがIBD診療で最も難しいポイントです。特にLPE(リンパ球形質細胞性腸炎)と小細胞型リンパ腫は、症状・超音波所見・一般的な生検だけでは区別がつかないことがあります。

項目 IBD(LPE) 小細胞型リンパ腫
好発年齢 7歳以上 10歳以上
体重減少 緩やか 急速
超音波所見 腸壁肥厚 腸壁肥厚+リンパ節腫大が多い
組織像 多様なリンパ球浸潤 均一な小型リンパ球浸潤
PARR検査 ポリクローナル モノクローナル
治療反応 ステロイドで改善 クロラムブシルで改善

鑑別には免疫染色とPARR(T細胞受容体・免疫グロブリン遺伝子再構成)検査が有用です。

猫のIBDの治療法は?

治療は食事療法から始め、反応が悪ければ段階的にステップアップするのが基本です。

食事療法(第一選択)

  • 加水分解タンパク食(ロイヤルカナン 低分子プロテイン、ヒルズ z/d 等)
  • 新規タンパク食(鹿肉・カンガルー肉など普段食べない食材)
  • 最低4〜8週間継続して反応を評価

食事だけで改善する猫も3割程度います。食物アレルギーが関与している場合はペットフードアレルギーの記事も参考になります。

薬物療法

食事療法で反応が不十分な場合、以下を追加します。

  • プレドニゾロン(ステロイド):1〜2mg/kg/日から開始、漸減
  • ブデソニド:全身性副作用を抑えたい場合
  • メトロニダゾール:抗炎症作用+腸内細菌改善
  • シクロスポリン・クロラムブシル:難治性IBDで免疫抑制剤を追加

補助療法

  • ビタミンB12(コバラミン)注射:欠乏している猫が多い
  • プロバイオティクス
  • 食物繊維調整

猫のIBDの治療費はいくらかかる?

初診〜確定診断、その後の治療費の目安は以下の通りです。

項目 費用目安
初診・血液検査・糞便検査 15,000〜30,000円
腹部超音波検査 5,000〜10,000円
内視鏡+生検(麻酔込み) 80,000〜150,000円
組織病理・PARR検査 20,000〜50,000円
月々の薬・療法食 5,000〜20,000円

診断までの総額は15万円前後、維持治療は月1万円前後を見込んでおくと安心です。詳細は動物病院の診療費ガイドもご覧ください。

猫のIBDは完治する?予後は?

IBDは基本的に「管理する病気」であり、完治を目指すより寛解の維持が目標となります。食事療法と薬物療法を適切に行えば、多くの猫で良好なQOLを維持できます。

ただし、低アルブミン血症を伴う重症例、肉芽腫性腸炎、リンパ腫への移行が疑われるケースでは予後が悪化します。定期的な体重測定・血液検査によるモニタリングが重要です。

日常生活で気をつけることは?

  • 療法食を途中でやめない(自己判断で普通食に戻さない)
  • ストレスを減らす(多頭飼いの環境調整)
  • 人間の食べ物・おやつを与えない
  • 毛玉ケア(被毛の飲み込みが胃腸を刺激)
  • 体重を月1回記録する

血便・急な体重減少・食欲廃絶があれば、血便体重減少の記事を参考に、すぐに動物病院を受診してください。

まとめ

猫のIBDは慢性下痢・嘔吐の代表的な原因であり、中高齢猫で多く見られます。リンパ球形質細胞性腸炎が最多で、消化器型リンパ腫との鑑別には内視鏡生検とPARR検査が必要です。食事療法・ステロイド・免疫抑制剤を組み合わせた治療で多くの猫は寛解を維持できます。3週間以上続く下痢や嘔吐があれば早めの受診をおすすめします。

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