猫の膀胱結石の症状・治療・予防食を獣医師が解説
この記事のポイント
- 猫の膀胱結石はストルバイトとシュウ酸カルシウムが大半を占める
- 雄猫では尿道閉塞を起こすと48時間以内に死亡するリスクあり
- ストルバイトは食事療法で溶解可能、シュウ酸カルシウムは手術が必要
- 血尿・頻尿・排尿困難があれば緊急受診
- 予防は水分摂取量アップと療法食の継続が鍵
猫の膀胱結石とは?
膀胱結石(尿石症)は、尿中のミネラル成分が結晶化し、膀胱内で固まって石となる病気です。猫の下部尿路疾患(FLUTD)の主要な原因のひとつで、特に中高齢猫・肥満猫・室内飼育猫に多く見られます。
なぜ猫は膀胱結石になりやすい?
- 祖先が砂漠由来で濃縮尿を作る習性がある
- もともと水をあまり飲まない
- 室内飼育・ドライフード中心で水分摂取が不足しがち
- 雄猫は尿道が細く長く、閉塞しやすい
猫の膀胱結石はどんな種類がある?
猫で見られる結石のほとんどは2種類です。
| 結石の種類 | 頻度 | 尿pH | 好発年齢 | 治療 |
|---|---|---|---|---|
| ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム) | 約40〜50% | アルカリ性 | 若齢〜中年 | 食事療法で溶解可能 |
| シュウ酸カルシウム | 約40〜50% | 酸性 | 中高齢 | 食事療法では溶けず、手術が必要 |
| 尿酸塩 | 稀 | — | 肝疾患併発 | 手術・食事療法 |
| シスチン | 稀 | — | 遺伝性 | 手術・食事療法 |
近年はシュウ酸カルシウム結石の増加傾向が見られ、ストルバイト予防食を与え続けた結果、尿が酸性に傾きすぎたことが一因と考えられています。
膀胱結石の症状は?
典型的な症状
- 血尿(猫の血尿)
- 頻尿(何度もトイレに行く)
- 排尿時の痛み・鳴き声
- 少量ずつしか出ない
- トイレ以外の場所で粗相
- 陰部を頻繁に舐める
緊急サイン(雄猫の尿道閉塞)
- 24時間以上尿が出ない
- 腹部が硬く張る
- 嘔吐・元気消失
- 低体温・虚脱
雄猫が完全閉塞を起こすと、急性腎不全・高カリウム血症から48〜72時間以内に死亡することがあります。これは一刻を争う緊急事態です。詳しくは猫の尿道閉塞の記事をご覧ください。
膀胱結石と膀胱炎の違いは?
症状が似ているため混同されやすいですが、原因と治療が異なります。詳細は猫の膀胱炎の記事も参考にしてください。
| 項目 | 膀胱結石 | 特発性膀胱炎 |
|---|---|---|
| 原因 | 結石による物理的刺激 | 原因不明・ストレス関連 |
| 画像診断 | 結石が写る | 結石なし |
| 治療 | 食事療法・手術 | ストレス軽減・消炎剤 |
| 再発 | 予防食で抑制可能 | 繰り返しやすい |
膀胱結石はどう診断する?
問診・身体検査
- 症状の経過
- 食事内容
- 触診で膀胱の張り・痛みを確認
尿検査
- pH測定
- 結晶の確認(顕微鏡)
- 潜血・比重
- 細菌の有無
画像検査
- レントゲン検査:ストルバイトとシュウ酸カルシウムはよく写る
- 超音波検査:小さな結石・砂状の結石・膀胱壁の評価
- 造影検査:尿道結石の確認
結石分析
摘出した結石の成分分析で、再発予防の食事選定に役立てます。
膀胱結石の治療法は?
ストルバイト結石の場合
食事療法で溶解可能です。
- 療法食(ロイヤルカナン ユリナリーS/O、ヒルズ c/d、ピュリナ UR 等)を4〜12週間継続
- 尿pHを酸性寄り(6.0〜6.5)に調整
- マグネシウム・リン制限
- 水分摂取量を増やす
成功率は70〜90%と高く、手術を避けられることが多い結石です。
シュウ酸カルシウム結石の場合
食事療法では溶けません。
- 小さい結石:経過観察+療法食で新生予防
- 大きい結石・症状あり:膀胱切開術で摘出
- 尿道閉塞:尿道カテーテル→解除→根治手術
尿道閉塞の緊急治療
- 静脈点滴で脱水・高カリウム血症を補正
- 鎮静下で尿道カテーテル挿入
- 膀胱洗浄
- 入院管理(2〜5日)
- 再閉塞する場合は会陰尿道造瘻術
膀胱結石の治療費はどれくらい?
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 初診・尿検査・レントゲン | 10,000〜20,000円 |
| 超音波検査 | 5,000〜8,000円 |
| 療法食(月々) | 4,000〜8,000円 |
| 膀胱切開術(麻酔・入院込み) | 100,000〜200,000円 |
| 尿道閉塞の緊急処置+入院 | 80,000〜200,000円 |
| 会陰尿道造瘻術 | 150,000〜300,000円 |
外科手術の費用詳細は動物病院の手術費用ガイドをご覧ください。
膀胱結石の予防方法は?
再発率が高い病気なので、生涯にわたる予防管理が必要です。
水分摂取量を増やす工夫
- ウェットフードを取り入れる(水分70%以上)
- 給水器(循環式)を設置
- 水飲み場を複数用意
- 水の種類を変えてみる(常温・ぬるま湯など)
- 食事にぬるま湯を加える
療法食の継続
結石の種類に合わせた療法食を生涯与えるのが基本です。一般食に戻すと再発リスクが跳ね上がります。フードアレルギーがある場合はペットフードアレルギーの記事もご覧ください。
環境改善
- トイレは「猫の頭数+1個」設置
- トイレの清潔保持(1日2回掃除)
- ストレス軽減(静かな環境)
- 適度な運動で肥満予防
定期検診
- 3〜6ヶ月ごとの尿検査
- 年1回の超音波検査
- 症状が出たら即受診
日常生活で気をつけること
- おしっこの量・回数・色を毎日チェック
- 食欲・飲水量の変化に注目
- 陰部を舐める頻度が増えたら要注意
- 体重管理(肥満はリスク因子)
- トイレに行って出ない→すぐ病院(雄猫は特に)
まとめ
猫の膀胱結石はストルバイトとシュウ酸カルシウムが二大結石で、ストルバイトは食事療法で溶解可能ですが、シュウ酸カルシウムは手術が必要です。雄猫では尿道閉塞を起こすと命に関わるため、血尿・頻尿・排尿困難があれば夜間でも受診してください。水分摂取量アップと療法食の継続が、再発予防の最大のポイントです。