猫が水をよく飲む 考えられる5つの病気【獣医師監修】
「最近、うちの猫がやたらと水を飲んでいる気がする」。そう感じたことはありませんか。猫は元々砂漠地帯の動物を祖先に持ち、少ない水分で生きられる体の仕組みを持っています。そのため、飲水量が目に見えて増加している場合は、体の中で何らかの異常が起きているサインかもしれません。
多飲多尿(たくさん水を飲み、たくさんおしっこをする状態)は、腎臓病や糖尿病など重大な疾患の初期症状として現れることがあります。この記事では、猫の飲水量が増える5つの主な病気と、飼い主が自宅でできるチェック方法、受診のタイミングについて獣医師監修のもとで解説します。
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この記事のポイント
- 猫の正常な飲水量は体重1kgあたり約50ml/日が目安
- 体重1kgあたり100ml/日を超える飲水量は「多飲」と判断される
- 腎臓病は高齢猫の最も多い多飲の原因
- 糖尿病、甲状腺機能亢進症、子宮蓄膿症、肝臓病も要チェック
- 多飲に気づいたら尿量の変化もあわせて確認する
- 早期発見が治療成績を大きく左右する
猫の正常な飲水量はどのくらい?
猫の飲水量の正常範囲と多飲の基準を理解しておくことが大切です。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| 正常な飲水量 | 体重1kgあたり20~45ml/日 |
| 多飲の基準 | 体重1kgあたり60ml/日以上 |
| 明らかな多飲 | 体重1kgあたり100ml/日以上 |
| 4kgの猫の正常範囲 | 80~180ml/日 |
| 4kgの猫の多飲 | 240ml/日以上 |
ただし、ドライフードのみの猫はウェットフード併用の猫より飲水量が多くなる傾向があります。また、気温が高い季節や運動量が多いときも増加します。
飲水量の測定方法
- 朝、計量カップで決まった量の水を入れる
- 24時間後に残量を計量カップで測る
- 入れた量から残量を引く
- 3日間連続で測定して平均を取る
- 複数の水飲み場がある場合はすべて測定する
- 多頭飼いの場合は個別に測定するのが難しいため、トイレの尿量で判断する
病気1:慢性腎臓病(CKD)
猫の多飲多尿で最も多い原因が慢性腎臓病です。7歳以上の猫の約30~40%が罹患するとされ、高齢猫の最も一般的な疾患のひとつです。
なぜ腎臓病で水をたくさん飲むのか
腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排出する臓器です。腎機能が低下すると、尿を濃縮する能力が失われ、薄い尿を大量に排出するようになります。体から水分が失われるため、それを補うために飲水量が増加します。
つまり、「水をたくさん飲むから尿が増える」のではなく、「尿が増えるから水をたくさん飲む」のが正確な順序です。
慢性腎臓病の他の症状
- 食欲の低下
- 体重の減少
- 毛艶が悪くなる
- 嘔吐の頻度が増える
- 口臭が強くなる(アンモニア臭)
- 元気がなくなる
- 便秘
検査と診断
血液検査(BUN、クレアチニン、SDMA)と尿検査(尿比重、尿タンパク)で診断します。SDMA検査は腎機能の約25%が失われた段階で異常値を示すため、従来のクレアチニンよりも早期発見が可能です。
病気2:糖尿病
猫の糖尿病は人間の2型糖尿病に類似しており、インスリンの分泌不足や作用不足によって血糖値が上昇する病気です。肥満の猫に多く見られます。
糖尿病の症状
- 多飲多尿
- 食欲の増加(初期)
- 体重の減少(食べているのに痩せる)
- 後肢の踵をつけて歩く(糖尿病性神経障害)
- 毛艶の悪化
- 元気消失(進行時)
糖尿病のリスク因子
- 肥満(体重過多の猫は発症リスクが4倍)
- 高齢(8歳以上)
- オス猫(メスの約2倍の発症率)
- 室内飼い(運動不足)
- ステロイドの長期使用
- バーミーズ(品種的素因)
猫の糖尿病の特徴
猫の糖尿病は、早期に適切な治療を開始すれば「寛解」(インスリン注射が不要になる状態)に至ることがあります。発症から早い段階で治療を始めるほど寛解率が高いため、多飲多尿に気づいたらすぐに受診することが重要です。
病気3:甲状腺機能亢進症
8歳以上の猫に多い内分泌疾患で、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで全身の代謝が異常に亢進します。
甲状腺機能亢進症の症状
- 多飲多尿
- 食欲の異常な増加(大食い)
- 体重の減少
- 活動性の増加(落ち着きがない)
- 嘔吐、下痢
- 毛艶の悪化
- 心拍数の増加
- 攻撃性の増加
診断
血液検査で甲状腺ホルモン(T4)の濃度を測定します。T4が高値であれば診断がつきます。ただし、他の疾患を合併していると正常範囲内に抑えられることがあるため、臨床症状から強く疑われる場合はフリーT4の測定を追加します。
治療の選択肢
| 治療法 | 特徴 | 費用の目安(月額) |
|---|---|---|
| 内服薬(メチマゾール) | 最も一般的、生涯投与 | 3,000~8,000円 |
| 療法食(ヨウ素制限食) | 投薬が難しい猫に | 5,000~8,000円 |
| 放射性ヨウ素治療 | 根治が期待できるが実施施設が限定的 | 20~40万円(1回) |
| 外科手術 | 甲状腺の摘出 | 10~20万円 |
病気4:子宮蓄膿症
未避妊のメス猫で多飲多尿が見られた場合、子宮蓄膿症の可能性があります。子宮内に膿が溜まる感染症で、治療が遅れると敗血症を起こして命に関わります。
子宮蓄膿症の症状
- 多飲多尿
- 食欲低下
- 元気消失
- 腹部の膨満
- 陰部からの排膿(開放型の場合)
- 発熱
- 嘔吐
緊急性
子宮蓄膿症は内科的な治療で一時的に改善することもありますが、根治には子宮卵巣摘出術(外科手術)が必要です。全身状態が悪化する前に手術を行うことが予後を大きく左右します。
病気5:肝臓病(肝リピドーシスなど)
肝臓に問題がある場合も多飲多尿が見られることがあります。猫に特に多いのが肝リピドーシス(脂肪肝)で、数日間の絶食をきっかけに発症することがあります。
肝臓病の症状
- 多飲多尿
- 食欲不振
- 嘔吐
- 黄疸(白目や耳の内側が黄色くなる)
- 体重減少
- 元気消失
多飲以外のチェックポイント
飲水量の増加に気づいたら、以下の項目もあわせて確認してください。
尿量のチェック
- トイレの猫砂の固まりが大きくなっていないか
- トイレの回数が増えていないか
- トイレ以外の場所で排尿していないか
- 尿の色が薄くなっていないか
体重のチェック
- 体重が減少していないか(月に1回は測定する)
- 食べる量は変わっていないのに体重が減っている場合は要注意
食欲のチェック
- 食欲が増えている(糖尿病、甲状腺機能亢進症の可能性)
- 食欲が落ちている(腎臓病、肝臓病、子宮蓄膿症の可能性)
動物病院での検査
多飲多尿で受診した場合の一般的な検査項目です。
| 検査項目 | 目的 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 尿検査(尿比重) | 尿の濃縮能力の評価 | 1,000~3,000円 |
| 血液生化学検査 | 腎機能、肝機能、血糖値の確認 | 5,000~10,000円 |
| 甲状腺ホルモン(T4) | 甲状腺機能亢進症の診断 | 3,000~5,000円 |
| 腹部エコー検査 | 腎臓の形態、子宮の状態確認 | 3,000~8,000円 |
| 血圧測定 | 高血圧の有無 | 1,000~3,000円 |
| SDMA | 早期腎臓病マーカー | 2,000~4,000円 |
受診の際は、できれば自宅で採取した尿を持参すると検査がスムーズです。早朝の新鮮な尿が最適です。ペットシーツを裏返して(吸収面を下にして)トイレに敷くか、システムトイレの下段に受け皿を置く方法で採取できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 猫が水を飲む量が増えたのですが、元気で食欲もあります。それでも受診すべきですか?
はい、受診をおすすめします。多飲多尿を引き起こす多くの疾患(慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症など)は、初期段階では元気や食欲が保たれていることが多いです。特に甲状腺機能亢進症や糖尿病の初期は食欲がむしろ増加します。元気があるうちに検査を受け、早期に治療を開始することで、予後が大きく改善します。
Q2. 夏場は暑いので水をたくさん飲むのは普通ではないですか?
気温が高い時期は飲水量がある程度増加するのは自然なことです。ただし、エアコンの効いた室内にいるのに飲水量が明らかに増えている場合や、涼しくなっても飲水量が戻らない場合は病的な多飲の可能性があります。目安として、体重1kgあたり60ml/日を超える飲水量が続くようなら受診してください。
Q3. 多飲多尿の検査にはどのくらいの費用がかかりますか?
初診料と基本的な血液検査、尿検査で合計10,000~20,000円程度が目安です。甲状腺ホルモンの測定やエコー検査が追加になると、20,000~35,000円程度になることがあります。ペット保険に加入している場合は適用される検査かどうか事前に確認しておくとよいでしょう。検査結果に基づいてさらに精密検査が必要になる場合もあります。
まとめ
猫が水をたくさん飲むようになったら、それは体からの重要なサインです。慢性腎臓病、糖尿病、甲状腺機能亢進症、子宮蓄膿症、肝臓病など、いずれも早期発見・早期治療が予後を大きく左右する疾患ばかりです。日頃から飲水量を把握し、普段との変化に気づけるようにしておきましょう。特に7歳を超えた猫は、年に1~2回の健康診断で血液検査・尿検査を受けることをおすすめします。
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