猫の肝リピドーシス(脂肪肝)の症状・治療・予防を獣医師監修で徹底解説
この記事のポイント:
- 肝リピドーシス(脂肪肝)は猫が3〜4日以上食欲不振になるだけで発症する猫特有の致命的疾患です。
- 致死率は無治療で90%、早期治療で30%以下に低下します。鍵は強制給餌(経腸チューブ栄養)。
- 肥満猫がリスクが高く、ダイエットは絶対に急速にしないこと。減量は週1%以内が鉄則です。
肝リピドーシスとは
猫が食事を摂らない状態が続くと、肝臓に中性脂肪が急速に蓄積し、肝機能が破綻する病気です。ネコ科動物は肝臓での脂質代謝能力が低いため、他動物より遥かに発症しやすい特徴があります。
原因
一次性(原因不明)
突然食欲を失い、発症。肥満猫に多い。
二次性(基礎疾患あり)
| 基礎疾患 | 頻度 |
|---|---|
| 膵炎 | 高 |
| IBD | 高 |
| 糖尿病 | 中 |
| 腎臓病 | 中 |
| 甲状腺機能亢進症 | 中 |
| 腫瘍 | 中 |
| 胆管炎 | 中 |
| ストレス(引越し、新しいペット等) | 中 |
約95%が基礎疾患を伴う二次性で、原因検索が治療と並行して必要です。
症状
初期(食欲不振開始〜3日)
- 食欲低下
- 元気低下
- 軽度の嘔吐
進行期(3〜7日)
| 症状 | 詳細 |
|---|---|
| 黄疸 | 白目・歯茎・耳介の皮膚が黄色 |
| 重度の食欲廃絶 | 完全に食べない |
| 元気消失・虚脱 | 動かない |
| 嘔吐 | 繰り返す |
| 下痢または便秘 | |
| 体重減少 | 急速 |
| 脱水 | 重度 |
末期
- 肝性脳症(徘徊、痙攣、意識障害)
- 凝固異常(出血)
- 昏睡
リスク因子
| 因子 | リスク倍率 |
|---|---|
| 肥満(BCS 6以上) | 3〜5倍 |
| 急な食事変更 | 高 |
| 急なダイエット | 高 |
| 環境ストレス | 中 |
| 他疾患の存在 | 中 |
| 高齢 | 中 |
診断
| 検査 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 血液検査 | ALT/ALP/GGT顕著上昇、総ビリルビン上昇 | 8,000〜15,000円 |
| 肝機能 | アルブミン低下、アンモニア上昇、凝固時間延長 | 5,000〜10,000円 |
| 腹部超音波 | 肝臓の高エコー化 | 5,000〜10,000円 |
| 肝細胞診(FNA) | 空胞化した肝細胞を確認。確定診断 | 5,000〜10,000円 |
| 基礎疾患検索 | fPL、T4、FeLV/FIV、画像検査 | 15,000〜30,000円 |
治療 -- 強制栄養がすべて
肝リピドーシスの唯一の根本治療は十分な栄養補給です。拒食状態を打破することで肝臓に蓄積した脂肪が代謝されます。
栄養補給の方法
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 経鼻食道チューブ | 最もシンプル。数日間の短期用 |
| 食道チューブ | 麻酔下設置。2〜8週間使用可能。最も実用的 |
| 胃ろうチューブ(PEG) | 長期用だが設置が大変 |
| 注射器強制給餌 | 不十分で誤嚥リスクあり |
食道チューブが最適解で、家族が自宅で6〜8回/日の給餌ができます。
併用治療
| 治療 | 目的 |
|---|---|
| 輸液療法 | 脱水補正、電解質補正 |
| 制吐剤(マロピタント) | 嘔吐コントロール |
| コバラミン(B12)注射 | 代謝サポート |
| ビタミンK | 凝固異常の改善 |
| SAMe、シリマリン | 肝保護 |
| カルニチン | 脂質代謝促進 |
| 基礎疾患の治療 |
食事内容
高タンパク・高カロリー食。a/d(ヒルズ)、Recovery(ロイヤルカナン)等の缶詰を使用し、チューブから注入します。
1日必要カロリー: 体重1kgあたり60〜80kcal(RER計算)
治療期間と費用
| 期間 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| 初期入院(3〜7日) | チューブ設置、集中治療 | 15〜30万円 |
| 自宅強制給餌(2〜8週間) | チューブ維持管理 | 5〜15万円 |
| 外来フォロー | 週1〜2回 | 3〜8万円 |
| 総費用 | 25〜60万円 |
【独自】猫の絶食リスクタイマー
| 絶食時間 | リスクレベル |
|---|---|
| 12時間 | 軽度・要観察 |
| 24時間 | 要診察 |
| 48時間 | 肝リピドーシス発症リスク開始 |
| 72時間 | 肝酵素上昇明らか |
| 7日 | 致命的 |
**「猫が食べない=病院」**のルールを徹底してください。
予防
- 急なダイエットは厳禁: 減量は週1%以内、月4%以内
- 食事変更はゆっくり: 新フードは7〜10日かけて移行
- ストレスを最小に: 引越し、新しいペット、留守番時の配慮
- 定期健診: 基礎疾患の早期発見
- 複数の給餌場所: 多頭飼育では競合回避
- 食欲低下に敏感に: 2日食べなければ受診
肥満猫のダイエット方法
BCS 6以上の猫は減量が必要ですが、急なダイエットは肝リピドーシスを誘発します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 減量目標 | 週0.5〜1%の体重減 |
| 期間 | 6〜12ヶ月 |
| 方法 | カロリー制限食 + 運動 |
| モニタリング | 週1回の体重測定 |
| 中止基準 | 食欲低下、元気低下 |
受診セルフチェック
- 2日以上食べていない
- 白目・歯茎が黄色い
- ぐったりしている
- 嘔吐を繰り返す
- 最近ダイエットを始めた
- 最近引越しや環境変化があった
- 肥満体型である
- 基礎疾患がある
FAQ よくある質問
Q1. 食道チューブは痛くないの? A. 設置時は麻酔下で行い、設置後の違和感は数日で慣れます。多くの猫は普通に生活できます。
Q2. 自宅で給餌できるか不安です。 A. 動物病院スタッフが丁寧に指導します。多くの飼い主が1週間以内に習得できています。
Q3. 強制給餌はいつまで必要? A. 自発的に食べるようになり、体重・肝酵素が安定するまで。通常2〜8週間です。
Q4. 完治しますか? A. 治療成功例は完治します。ただし基礎疾患がある場合はそちらの管理が必要。
Q5. 予後は? A. 早期診断・適切な強制給餌で生存率は60〜85%。ただし無治療では90%以上が死亡します。
Q6. ペット保険は? A. 多くのプランで対応。ペット保険比較を参照。
まとめ
肝リピドーシスは予防が最善の病気です。「猫が2日食べない→病院へ」の一線を家族全員で共有してください。発症しても早期の強制栄養で救命できます。肥満猫のダイエットは絶対に急がないこと、これが飼い主の鉄則です。
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免責事項: 本記事は一般情報であり、個別診療に代わるものではありません。