猫の膵炎の症状・診断・治療を獣医師監修で徹底解説【犬と違う猫特有の注意点】
この記事のポイント:
- 猫の膵炎は犬と異なり**慢性型が約60%**を占め、症状が非特異的で見逃されやすい疾患です。
- IBD・肝リピドーシスと併発する「トライアディティス(三徴炎)」が猫特有で、治療方針に影響します。
- 診断は猫特異的膵リパーゼ(Spec fPL)と超音波、治療は輸液・制吐・早期経腸栄養で、費用は入院3〜15万円。
猫の膵炎の特徴
猫の膵炎は犬と異なる以下の特徴があります。
| 項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 主な型 | 急性が多い | 慢性が多い(60%) |
| 原因 | 高脂肪食が主因 | 原因不明が多い |
| 症状 | 嘔吐・腹痛が明確 | 非特異的・曖昧 |
| 併発疾患 | 稀 | IBD、肝リピドーシス(トライアディティス) |
| 食事療法 | 低脂肪食 | 脂肪制限より消化性優先 |
症状 -- 猫は「わかりにくい」
| 症状 | 頻度 |
|---|---|
| 元気消失 | 80% |
| 食欲不振 | 80% |
| 脱水 | 50% |
| 体重減少 | 50% |
| 嘔吐 | 30〜40%(犬ほど典型的でない) |
| 低体温 | 30% |
| 腹痛 | 25%(判定困難) |
| 黄疸 | 20%(肝リピドーシス合併時) |
| 下痢 | 20% |
重要: 「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」だけでも膵炎のことがあります。
トライアディティス(三徴炎)
猫では膵炎・胆管炎・IBDの3疾患が併発する「トライアディティス」が多く、治療が複雑化します。
| 疾患 | 症状 |
|---|---|
| 膵炎 | 食欲低下、嘔吐 |
| 胆管肝炎 | 黄疸、肝酵素上昇 |
| IBD | 慢性下痢、体重減少 |
解剖学的に猫は総胆管と膵管が十二指腸で合流するため、一方の炎症が他方に波及しやすい構造です。
原因
| 原因 | 詳細 |
|---|---|
| 特発性 | 約90%が原因不明 |
| 外傷性 | 高所落下、交通事故 |
| 感染性 | トキソプラズマ、FIP、FeLV |
| 代謝性 | 糖尿病、甲状腺機能亢進症 |
| 中毒 | 有機リン、一部の薬剤 |
| 術後 | 腹部手術後 |
診断
| 検査 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 血液検査・生化学 | 肝酵素、電解質、血糖、TP | 5,000〜12,000円 |
| Spec fPL(猫特異的膵リパーゼ) | 最重要検査 | 6,000〜12,000円 |
| 腹部超音波 | 膵臓腫大、周囲炎症 | 5,000〜10,000円 |
| 腹部レントゲン | 他疾患除外 | 3,000〜6,000円 |
| T4・コバラミン・葉酸 | 併発疾患評価 | 6,000〜12,000円 |
| FNA・生検 | トライアディティス確定 | 20,000〜60,000円 |
アミラーゼ・リパーゼは猫の膵炎診断には役立ちません。Spec fPL または膵臓超音波を用います。
治療
猫の膵炎に特効薬はなく、支持療法が中心です。
基本治療
| 治療 | 詳細 |
|---|---|
| 輸液療法 | 脱水補正、循環維持 |
| 制吐剤 | マロピタント(セレニア)、オンダンセトロン |
| 鎮痛剤 | ブプレノルフィン |
| 早期経腸栄養 | 食欲が戻らなければ経鼻・食道チューブで強制給餌 |
| 抗生剤 | 細菌感染合併時のみ |
| コバラミン(ビタミンB12) | 補充必須 |
肝リピドーシス予防のポイント
**猫は48時間以上の絶食で肝リピドーシス(脂肪肝)**を発症します。食欲不振時は速やかに強制給餌 or 経腸チューブを設置してください。
費用目安
| 重症度 | 入院 | 費用 |
|---|---|---|
| 軽症 | 通院 | 2〜5万円 |
| 中等症 | 3〜5日 | 5〜12万円 |
| 重症(トライアディティス) | 7〜14日 | 15〜30万円 |
食事管理
犬と異なり、猫では過度な脂肪制限は推奨されません。消化性の高い食事を優先します。
推奨
- 高消化性タンパク
- 中等度の脂肪(制限しすぎない)
- 少量頻回
- ウェットフード中心(水分補給)
併発疾患がある場合
- IBD併発 → 加水分解タンパク食
- 糖尿病併発 → 高タンパク低炭水化物
- 肝リピドーシス → 高カロリー・強制給餌
【独自】猫の絶食リスクタイマー
| 絶食時間 | リスク |
|---|---|
| 24時間 | 一般的・要観察 |
| 48時間 | 肝リピドーシス開始 |
| 72時間 | 肝機能低下進行 |
| 1週間 | 致命的リスク |
猫が丸2日食べていない時点で病院へ。「もう少し様子を見よう」が命取りになります。
受診セルフチェック
- 2日以上食べていない
- 元気がない
- 嘔吐を繰り返す
- 体重が減ってきた
- 黄疸(白目・歯茎が黄色)
- 脱水(皮膚の戻りが遅い)
- 下痢を伴う
- IBD・糖尿病・甲状腺疾患と診断されている
予防
- 食生活: 急な食事変更を避ける
- 体重管理: 肥満は膵炎リスクを高める
- 中毒物質の管理: 殺虫剤、有機リン、薬剤の誤食防止
- 併発疾患の管理: 糖尿病・甲状腺の適切なコントロール
- 定期健診: 7歳以降は年2回の猫の健康診断
FAQ よくある質問
Q1. 猫の膵炎は再発しますか? A. 慢性型が多いため、再発・増悪を繰り返します。食事と併発疾患の管理が重要です。
Q2. 犬の膵炎のように高脂肪食が原因? A. 猫では高脂肪食と膵炎の明確な因果関係は証明されていません。ただし急な食事変更は避けるべきです。
Q3. 絶食は必要? A. 昔は絶食が推奨されましたが、現在は早期経腸栄養が予後改善につながるとされ、強制給餌も選択肢です。
Q4. コバラミン注射が必要と言われました。なぜ? A. 膵炎・IBDではコバラミン(ビタミンB12)吸収が低下し、食欲・体重・腸機能に影響します。週1回×6週の皮下注射が一般的です。
Q5. ペット保険は適用? A. 多くのプランで対象です。発症前加入が前提。詳細はペット保険比較参照。
Q6. 診断が難しいと聞きました。 A. 猫の膵炎は非特異的症状と低感度検査のため見逃されやすいです。Spec fPL+腹部超音波の組み合わせで診断精度が上がります。
まとめ
猫の膵炎は「わかりにくい病気」です。食欲低下が2日続けば病院受診、これを徹底すれば肝リピドーシスという致命的合併症を防げます。トライアディティスの可能性も念頭に置き、包括的な検査・治療を受けましょう。
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免責事項: 本記事は一般的情報を提供するもので、個別診療に代わるものではありません。