犬のチェリーアイ(第三眼瞼腺突出)の症状・手術・費用【獣医師監修】
愛犬の目の内側(鼻側)に赤いぷっくりした塊が飛び出している--これは**チェリーアイ(第三眼瞼腺突出)**という病態で、犬の眼科疾患の中でも比較的多いものです。自然に治ることは稀で、放置するとドライアイや角膜障害のリスクが高まります。この記事では、原因・症状・手術方法・費用を獣医師監修で解説します。
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この記事のポイント
- チェリーアイは第三眼瞼(瞬膜)の涙腺が脱出する病態。さくらんぼ状の赤い腫れが特徴
- 好発犬種はフレンチブルドッグ、ビーグル、コッカースパニエル、シーズー
- 自然治癒は稀。手術(ポケット法)が第一選択
- 手術費用は片眼30,000〜80,000円が目安
- 腺を切除する手術は推奨されない(ドライアイの原因になる)
チェリーアイとは
第三眼瞼(瞬膜)の構造
犬には人間にはない**第三眼瞼(瞬膜)という半透明の膜が目の内側にあります。この瞬膜の裏側には第三眼瞼腺(瞬膜腺)という涙を分泌する腺組織があり、犬の涙液の約30〜50%**を産生しています。
チェリーアイは、この第三眼瞼腺が正常な位置から脱出し、目の表面に赤い塊として現れる状態です。名前の由来は、赤く丸い腫れが**さくらんぼ(チェリー)**に似ていることから来ています。
原因
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 先天性の結合組織の脆弱性 | 第三眼瞼腺を固定する靭帯が生まれつき弱い |
| 遺伝 | 特定犬種に多く、遺伝的素因が大きい |
| 炎症 | 結膜炎などの炎症が引き金になることも |
好発犬種
| 好発犬種 | リスク |
|---|---|
| フレンチブルドッグ | 非常に高い |
| イングリッシュブルドッグ | 非常に高い |
| ビーグル | 高い |
| コッカースパニエル | 高い |
| シーズー | 高い |
| ラサアプソ | 高い |
| バセットハウンド | 高い |
| ボストンテリア | 中〜高い |
好発年齢: 多くは2歳未満で発症しますが、成犬でも発症することがあります。
症状
見た目の特徴
- 目の内側(鼻側の下方)に赤くぷっくりした塊が突出
- 片眼のみの場合が多いが、両眼に発症する犬も約20〜30%
- 大きさは小豆大〜ビー玉大まで様々
- 出たり引っ込んだりすることがある(特に初期)
随伴症状
| 症状 | 原因 |
|---|---|
| 目をしょぼしょぼする | 異物感・不快感 |
| 涙が多い | 腺の炎症・刺激 |
| 目やにが増える | 二次的な結膜炎 |
| 目を前足で擦る | かゆみ・違和感 |
| 充血 | 炎症 |
放置するとどうなるか
チェリーアイを放置すると以下のリスクがあります。
- 慢性的な炎症: 脱出した腺が外気にさらされ続け、腫れ・炎症が悪化
- ドライアイ(KCS): 腺組織が長期間露出すると機能低下し、涙液産生量が減少
- 角膜潰瘍: ドライアイや腺の物理的接触により角膜が傷つく
- 結膜炎の慢性化: 二次感染を繰り返す
- 視力への影響: 角膜障害が進行すると視力低下の可能性
治療
手術が第一選択
チェリーアイの根本治療は手術です。点眼薬や抗炎症薬は一時的な対症療法に過ぎず、多くの場合再脱出します。
手術方法の比較
| 手術法 | 方法 | 成功率 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| ポケット法(Morgan法) | 脱出した腺を粘膜のポケットに収納して縫合 | 85〜95% | 腺を温存。涙液産生を維持 | 5〜15%で再脱出あり |
| 固定法(Tacking法) | 腺を眼窩骨膜に縫い付けて固定 | 90〜95% | 再脱出が少ない | ポケット法より侵襲性がやや高い |
| 切除法(非推奨) | 腺そのものを切除 | 100%(腺がないため) | 再脱出なし | 涙液が30〜50%減少→ドライアイのリスク大 |
重要: 腺の切除は現在推奨されていません。かつては一般的でしたが、切除後にドライアイを発症するリスクが高く、生涯にわたる点眼治療が必要になる場合があります。必ず**腺を温存する術式(ポケット法・固定法)**を行う病院を選んでください。
手術費用
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 術前検査 | 5,000〜10,000円 |
| 手術(片眼) | 20,000〜60,000円 |
| 麻酔 | 手術費に含まれることが多い |
| 術後の点眼薬 | 1,000〜3,000円 |
| 再診・抜糸 | 1,000〜3,000円 |
| 片眼合計 | 30,000〜80,000円 |
| 両眼の場合 | 50,000〜120,000円 |
術後のケア
- エリザベスカラーを10〜14日間装着
- 処方された点眼薬(抗菌+抗炎症)を指示通りに点眼
- 術後1〜2週間は激しい運動を控える
- 1週間後・2週間後に再診
手術前に試せる保存療法
ごく初期の軽度な脱出であれば、以下を試みることがあります。ただし永続的な効果は期待しにくいです。
| 方法 | 説明 |
|---|---|
| 手指で愛護的に押し戻す | 獣医師の指導のもと、清潔な手で腺をそっと押し戻す |
| 抗炎症点眼薬 | 腫れを抑えて押し戻しやすくする |
| ステロイド点眼 | 炎症が強い場合に短期間使用 |
いずれも根本治療ではなく、再脱出を繰り返す場合は手術が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. チェリーアイは自然に治りますか?
非常に稀に自然に戻って再脱出しなくなるケースがありますが、大多数は自然治癒しません。早めの手術が推奨されます。
Q2. チェリーアイの手術は何歳から受けられますか?
全身麻酔が可能な年齢(一般に生後4ヶ月以降)であれば手術可能です。若い犬ほど組織の回復力が高く、手術成績も良好です。
Q3. 片眼にチェリーアイが出たら、もう片方も出ますか?
約20〜30%の犬で両眼に発症します。片眼の手術時に、もう片方も予防的に固定するかどうか、獣医師と相談してください。
Q4. 手術後に再発することはありますか?
ポケット法では5〜15%の再脱出率があります。再脱出した場合は再手術(固定法を併用することが多い)で対応します。
Q5. ペット保険はチェリーアイの手術に使えますか?
多くのペット保険で補償対象となりますが、先天性疾患を除外するプランでは対象外の場合があります。加入条件を確認してください。保険比較ガイドも参考にしてください。
Q6. 一般の動物病院で手術できますか?
チェリーアイの手術は眼科の専門知識が求められます。かかりつけ病院で対応していない場合は、眼科専門医のいる二次診療施設を紹介してもらいましょう。
まとめ
チェリーアイは見た目のインパクトが大きいですが、適切な手術で良好に管理できる病気です。最も重要なのは腺を切除しない術式を選ぶこと。発見したら早めに動物病院を受診し、眼科手術の経験が豊富な獣医師に相談しましょう。
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本記事はpet-dock獣医師監修チームが執筆・監修しています。記載内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。愛犬の状態に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。