犬が草を食べる理由 止めるべき?【獣医師監修】
散歩中に愛犬が道端の草をむしゃむしゃ食べている光景は、多くの飼い主が経験していることでしょう。犬が草を食べるのは珍しい行動ではなく、ある調査では約80%の犬が日常的に草を食べるという報告もあります。
しかし、「草を食べるのは胃の調子が悪いから」「毒のある草を食べたら危険」など、さまざまな情報があり、止めるべきかどうか迷う飼い主も多いのではないでしょうか。この記事では、犬が草を食べる理由を科学的な知見に基づいて解説し、止めるべきケースと見守ってよいケースを獣医師監修のもとで整理します。
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この記事のポイント
- 犬が草を食べるのは多くの場合正常な行動
- 「吐くために草を食べる」という説は一面的で、吐かずに草を食べる犬の方が多い
- 食物繊維の補給や本能的な行動である可能性
- 除草剤や農薬が散布された草は危険
- 急に草を食べ始めた、頻度が増えた場合は胃腸の不調を疑う
- 嘔吐や下痢を繰り返す場合は動物病院を受診する
犬が草を食べる理由
犬が草を食べる理由について、いくつかの仮説が提唱されています。実際にはひとつの原因ではなく、複数の要因が組み合わさっていると考えられています。
理由1:本能的な行動
犬の祖先であるオオカミも草や植物を食べることが観察されています。これは肉食寄りの雑食動物として、少量の植物を摂取する本能が残っていると考えられています。実際に、健康で食事内容にも問題がない犬でも草を食べることがあります。
理由2:食物繊維の補給
犬は本能的に食物繊維を求めて草を食べている可能性があります。ある研究では、食事に食物繊維を増やしたところ草を食べる頻度が減少したという報告があります。市販のドッグフードには十分な食物繊維が含まれていることが多いですが、個体によっては不足を感じている場合があります。
理由3:胃腸の不調を和らげるため
草を食べた後に嘔吐する犬がいることから、「胃の調子が悪いときに草を食べて吐こうとしている」という説があります。しかし、研究によると草を食べた後に嘔吐する犬は全体の約25%に過ぎず、多くの犬は草を食べても吐きません。胃腸の不調が原因で草を食べるケースはあるものの、それがすべてではないのです。
理由4:退屈やストレスの解消
運動不足や精神的な刺激が足りない犬が、退屈しのぎとして草を食べることがあります。散歩の時間が短い犬や、留守番が長い犬に多く見られることがあります。
理由5:味や食感が好き
単純に草の味や食感が好きで食べている犬もいます。特に新芽のやわらかい草を好んで選んで食べる犬は、嗜好として食べている可能性が高いです。
草を食べること自体は危険?
草を食べる行動自体は、多くの場合深刻な問題ではありません。しかし、以下のリスクがあることを知っておく必要があります。
| リスク | 詳細 | 対策 |
|---|---|---|
| 除草剤・農薬 | 公園や道路沿いに散布されている可能性 | 管理された場所の草を避ける、散布直後の場所を避ける |
| 寄生虫 | 他の動物の糞便から感染した土壌の草 | 定期的な駆虫薬の投与 |
| 有毒植物 | ユリ科、ツツジ科、スズランなど | 食べている草の種類を確認する |
| 異物の誤飲 | 草と一緒に石、プラスチック片などを飲み込む | 食べている最中は見守る |
| 消化管閉塞 | 大量の草が腸に詰まる(稀) | 大量摂取を防ぐ |
特に危険な植物
以下の植物は犬にとって有毒であるため、散歩コースに生えていないか注意してください。
- ユリ(特に猫には猛毒だが犬にも有害)
- スズラン(全草に毒がある)
- アジサイ(青酸配糖体を含む)
- ツツジ、シャクナゲ(グラヤノトキシンを含む)
- アサガオ(種に毒がある)
- イチイ(葉、種に毒がある)
- チューリップ(球根が特に危険)
止めるべきケースと見守ってよいケース
見守ってよいケース
- 少量の草を食べてすぐに他の行動に移る
- 草を食べた後も元気で食欲がある
- 嘔吐しない、または極めてまれに吐く程度
- 安全な場所(自宅の庭など、農薬を使っていない)の草
- 昔からの習慣で量が変わっていない
止めるべきケース
- 除草剤や農薬が散布されている可能性がある場所
- 有毒植物が生えている場所
- 大量に食べようとする
- 食べた後に頻繁に嘔吐する
- 下痢、元気消失、食欲低下を伴う
- 急に草を食べ始めた(以前は食べなかった)
- 草を食べる頻度が急増した
急に草を食べ始めた場合に考えられる病気
草を食べる行動が急に始まったり、頻度が増加した場合は、以下の疾患が隠れている可能性があります。
胃炎・胃腸炎
胃粘膜の炎症によるむかつきを和らげようとして草を食べることがあります。食事の変更、拾い食い、ストレスなどが原因で急性胃炎を起こすことがあります。
炎症性腸疾患(IBD)
慢性的な消化管の炎症で、嘔吐、下痢、体重減少を伴います。草を食べる行動が目立つようになることがあります。
膵炎
膵臓の炎症による腹痛や嘔気が、草を食べる行動につながることがあります。嘔吐、下痢、腹痛、食欲低下を伴います。
消化管内異物
おもちゃの破片や布などを飲み込んだ場合、胃腸の不快感から草を食べようとすることがあります。
栄養不良
食事の質が低い場合や、特定の栄養素が不足している場合に草を食べることがあります。フードの変更を検討する必要があるかもしれません。
草を食べる行動を減らすには
草を食べる行動自体が問題なのではなく、その背景にある原因に対処することが大切です。
食事の見直し
- 食物繊維が適切に含まれたフードを選ぶ
- 野菜(茹でたブロッコリー、にんじん、さつまいもなど)を少量トッピングする
- フードの品質を見直す
- 食事回数を増やして空腹の時間を減らす
運動と刺激の充実
- 散歩の時間や距離を増やす
- 知育玩具(コングなど)を活用する
- トレーニングの時間を設ける
- 遊びの時間を確保する
トレーニング
- 「離して」「ダメ」のコマンドを教える
- 草を食べようとしたらおやつで気をそらし、別の行動を褒める
- リードで制御する(引っ張らず、方向を変える)
動物病院での検査
草を食べる行動に加えて、嘔吐、下痢、食欲低下、体重減少などの症状がある場合は、以下の検査が行われます。
| 検査項目 | 目的 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 身体検査・触診 | 腹部の痛み、腫瘤の確認 | 診察料に含まれる |
| 血液検査 | 内臓機能、炎症の有無 | 5,000~10,000円 |
| 便検査 | 寄生虫、消化状態の確認 | 1,000~3,000円 |
| 腹部レントゲン | 異物、腸閉塞の確認 | 4,000~8,000円 |
| 腹部エコー | 消化管の状態、膵臓の炎症 | 3,000~8,000円 |
| 内視鏡検査 | 胃粘膜の観察、生検 | 30,000~60,000円 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 犬が草を食べて吐いた場合、受診すべきですか?
草を食べた後に1回嘔吐し、その後元気で食欲もある場合は、すぐに受診する必要はありません。草の刺激で胃が反応して吐いただけの可能性が高いです。ただし、嘔吐が複数回続く、食欲がない、ぐったりしている、血が混じっている、下痢もある場合は受診してください。また、草を食べた後の嘔吐が頻繁に繰り返されるようなら、背景に胃腸の慢性疾患がある可能性があるため、一度検査を受けることをおすすめします。
Q2. 犬に安全に食べさせられる草はありますか?
ペット用の「猫草」として販売されている燕麦(えんばく)やイタリアンライグラスは、犬にも安全です。これを自宅のプランターで育てれば、農薬や寄生虫の心配なく、犬が安全に草を食べることができます。ただし、大量に食べると消化不良を起こす可能性があるため、適量にとどめてください。自宅の庭で犬が食べそうな場所には有毒植物を植えないよう注意しましょう。
Q3. 子犬が草を食べたがります。問題ありませんか?
子犬は好奇心旺盛で何でも口に入れたがる時期があり、草を食べるのもその一環であることが多いです。少量であれば大きな問題にはなりませんが、子犬は消化機能がまだ未熟なため、大量に食べると嘔吐や下痢を起こしやすいです。また、子犬は寄生虫への抵抗力が低いため、散歩中の草はなるべく食べさせないようにし、定期的な駆虫を行いましょう。代わりにペット用の安全な草を自宅に用意するのがおすすめです。
まとめ
犬が草を食べるのは多くの場合正常な行動であり、過度に心配する必要はありません。ただし、除草剤や有毒植物のリスクがある場所では食べさせない、急に行動が変化した場合は胃腸の不調を疑うなど、適切な判断が必要です。嘔吐や下痢が繰り返される場合は自己判断で様子を見ず、動物病院を受診してください。
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