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犬の膵炎(すいえん)の原因・症状・治療・食事を獣医師監修で徹底解説
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犬の膵炎(すいえん)の原因・症状・治療・食事を獣医師監修で徹底解説

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監修: 監修獣医師(後日記入)

犬の膵炎(すいえん)の原因・症状・治療・食事を獣医師監修で徹底解説

この記事のポイント: 犬の膵炎は「嘔吐」「腹痛」「食欲不振」が三大症状です。高脂肪食やおやつの与えすぎが最大のリスク因子であり、重症化すると命に関わります。急性・慢性の違い、犬種別リスク、治療費の目安、再発予防の食事管理まで獣医師監修で網羅的に解説します。


犬の膵炎とは? -- 膵臓の「自己消化」が起こる病気

膵炎とは、膵臓が自ら分泌する消化酵素によって自分自身を消化してしまう病気です。

膵臓は胃の後方にある小さな臓器で、2つの重要な役割を持っています。

機能 内容
外分泌機能 消化酵素(リパーゼ、アミラーゼ、トリプシンなど)を分泌し、食べ物を消化する
内分泌機能 インスリンなどのホルモンを分泌し、血糖値を調節する

正常な状態では、消化酵素は膵臓内では不活性の状態で保たれ、十二指腸に分泌されてから活性化します。しかし、何らかの原因で膵臓内で酵素が活性化してしまうと、膵臓自体を消化し始め、激しい炎症が起こります。これが膵炎です。


犬の膵炎の症状

急性膵炎の症状

急性膵炎は突然発症し、以下の症状が見られます。

症状 詳細
嘔吐 繰り返す激しい嘔吐。水を飲んでも吐く
腹痛 お腹を触ると嫌がる、「祈りのポーズ」(前足を伸ばして上半身を伏せ、腰を高く上げる姿勢)をとる
食欲廃絶 全く食べない
元気消失 ぐったりして動かない
下痢 水様性の下痢を併発することがある
発熱 39.5度以上の発熱
腹部の緊張 お腹が硬く張っている

「祈りのポーズ」は膵炎の特徴的なサインです。 犬がこの姿勢をとっている場合は、強い腹痛を感じている可能性が高く、早急な受診が必要です。

慢性膵炎の症状

慢性膵炎は急性膵炎よりも症状が曖昧で、見逃されやすい疾患です。

  • 時々嘔吐する(月に数回程度)
  • 食欲にムラがある
  • 軟便が続く
  • 体重が徐々に減少する
  • お腹を丸めてうずくまることがある

慢性膵炎は「なんとなく調子が悪い」状態が続くため、飼い主が気づきにくいのが問題です。 急性膵炎を繰り返すうちに慢性化することが多く、最終的に膵臓の機能が低下して糖尿病や膵外分泌不全を引き起こすことがあります。


犬の膵炎の原因とリスク因子

主な原因

原因 詳細
高脂肪食 最大のリスク因子。脂肪の多い食事やおやつの与えすぎ
食卓からの人間の食べ物 唐揚げ、焼き肉の脂身、バター、チーズなどの高脂肪食品
盗み食い ゴミ箱あさり、テーブルの上の食べ物を食べてしまう
肥満 脂肪代謝が乱れ、膵臓への負担が増加
高脂血症 血中の中性脂肪やコレステロールが高い状態
内分泌疾患 糖尿病、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、甲状腺機能低下症
薬剤性 ステロイド長期投与、一部の抗がん剤、臭化カリウムなど
外傷・手術 腹部の外傷、膵臓近くの手術後

膵炎になりやすい犬種

リスクの高い犬種 理由
ミニチュア・シュナウザー 遺伝的に高脂血症(高トリグリセリド血症)になりやすい。膵炎の発症率が他犬種の約3〜5倍
コッカー・スパニエル 脂質代謝の遺伝的特性
シェットランド・シープドッグ 高脂血症のリスクが高い
ヨークシャー・テリア 小型犬で膵炎の発症頻度が高い
トイ・プードル 小型犬全般に多い傾向
キャバリア 遺伝的要因

中高齢(7歳以上)の犬はリスクが高まります。 また、避妊・去勢済みの犬は未手術の犬と比べて肥満になりやすく、間接的にリスクが上がります。


【独自】犬の膵炎リスクスコアカード

pet-dockが獣医師への取材をもとに独自に作成した、愛犬の膵炎リスクを自己評価するためのスコアカードです。競合サイトでは症状の羅列にとどまりますが、飼い主が日常生活の中で膵炎のリスクを定量的に把握できるようにしました。

各項目に該当するかチェックし、合計スコアでリスクレベルを確認してください。

# チェック項目 スコア
1 高脂血症と診断されたことがある +3
2 ミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエル、シェルティのいずれか +3
3 7歳以上である +2
4 BCS(ボディコンディションスコア)4以上(肥満傾向) +2
5 人間の食べ物を日常的に与えている +2
6 おやつが1日の摂取カロリーの10%を超えている +2
7 ステロイドを長期間服用している +2
8 糖尿病 or クッシング症候群と診断されている +2
9 過去に膵炎を発症したことがある +3
10 運動量が少ない(1日30分未満の散歩) +1

スコア判定

合計スコア リスクレベル 推奨アクション
0〜3 低リスク 年1回の健康診断で膵臓の数値もチェック
4〜7 中リスク 半年に1回の血液検査(リパーゼ含む)。食事の脂肪量を見直す
8〜12 高リスク 3ヶ月に1回の定期検査。低脂肪食への切り替えを獣医師と相談
13以上 非常に高い 獣医師の指導のもと厳密な食事管理。緊急時の対応計画を準備

犬の膵炎の検査と診断

膵炎の診断は単一の検査では確定できず、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。

検査 内容 感度 費用目安
犬膵特異的リパーゼ(Spec cPL / SNAP cPL) 膵炎に最も特異性が高い血液検査。SNAP cPLは院内で15分で結果が出る 5,000〜10,000円
一般血液検査(CBC+生化学) 白血球数、CRP(炎症マーカー)、肝酵素、腎数値を確認 5,000〜15,000円
腹部超音波検査 膵臓の腫大・周囲脂肪の炎症を画像で確認 中〜高 3,000〜8,000円
腹部レントゲン 他の疾患(異物、腸閉塞等)の除外に使用 3,000〜6,000円

※ 動物病院は自由診療のため、費用は病院によって異なります。


犬の膵炎の治療

急性膵炎の治療

急性膵炎には膵炎そのものを治す「特効薬」はなく、**支持療法(身体が回復するのをサポートする治療)**が基本です。

治療内容 詳細
輸液療法(点滴) 脱水の補正と膵臓の血流維持。治療の最重要項目
制吐薬 マロピタント(セレニア)等で嘔吐をコントロール
鎮痛薬 ブプレノルフィン、メタドン等で腹痛を管理。痛みの管理は予後を左右する
早期栄養サポート 従来は「絶食」が基本だったが、近年は12〜24時間以内の早期給餌が推奨されている
抗菌薬 二次感染が疑われる場合に使用

治療のポイント -- 「絶食」から「早期給餌」へ

以前は膵炎の治療で長期の絶食が推奨されていましたが、最新の獣医学研究では、嘔吐がコントロールされた段階で早期に少量の低脂肪食を開始する方が回復が早いとされています。

慢性膵炎の治療

慢性膵炎は完治が難しく、長期的な管理が必要です。

  • 食事療法: 低脂肪の処方食を継続
  • 膵酵素補充: 膵外分泌不全を併発している場合
  • 定期検査: 3〜6ヶ月ごとの血液検査で膵臓の状態をモニタリング
  • 合併症の管理: 糖尿病を発症した場合はインスリン治療

犬の膵炎の治療費

重症度 入院期間 治療費目安
軽症(外来治療可能) 通院のみ 2〜5万円
中等症(入院が必要) 3〜5日 5〜15万円
重症(集中治療が必要) 5〜10日以上 15〜30万円以上

再発を繰り返す場合の年間費用: 軽症の再発が年2〜3回で10〜20万円、慢性化して定期通院が必要な場合は年間20〜40万円程度かかることがあります。


【独自】膵炎後の食事管理 -- 脂肪量の具体的な目安と食品リスト

pet-dockが獣医師への取材をもとに独自に作成した、膵炎後の食事管理ガイドです。競合サイトでは「低脂肪食にしましょう」という抽象的なアドバイスにとどまりますが、具体的な脂肪量の数値目安と食品別の可否を一覧化しました。

脂肪含有量の目安

項目 基準
ドライフードの脂肪含有量 10%以下(通常フードは12〜20%)
ウェットフードの脂肪含有量(乾物基準) 10%以下
おやつを含む1日の総脂肪摂取量 体重1kgあたり1g以下を目安

膵炎の犬に与えてよい食品・避けるべき食品

カテゴリ OK(低脂肪) NG(高脂肪・高リスク)
タンパク質 鶏むね肉(皮なし)、ささみ、白身魚(タラ、カレイ)、鹿肉 鶏皮、豚バラ、牛脂身、ラム肉、ソーセージ
炭水化物 白米、さつまいも、かぼちゃ、じゃがいも 油で調理したもの全般
野菜 ブロッコリー、にんじん、キャベツ アボカド、ネギ類(中毒)
油脂 少量の魚油(オメガ3) バター、ラード、ごま油、オリーブオイル(大量)
おやつ 低脂肪の処方食トリーツ ジャーキー、チーズ、人間用のお菓子
乳製品 低脂肪ヨーグルト(少量) チーズ、生クリーム、アイスクリーム

処方食(療法食)の例

以下は膵炎の犬に使用される代表的な低脂肪処方食です。

製品名 メーカー 脂肪含有量(乾物基準)
消化器サポート(低脂肪) ロイヤルカナン 約7%
i/d Low Fat ヒルズ 約7%
消化器ケア 低脂肪 ピュリナプロプラン 約8%

※ 処方食は獣医師の指導のもとで使用してください。


膵炎の再発を防ぐために飼い主ができること

膵炎は再発率が非常に高い疾患です。一度発症した犬の約半数が再発するとされており、以下の対策が重要です。

  1. 食事管理を徹底する: 低脂肪食を継続し、人間の食べ物は与えない
  2. おやつは1日の摂取カロリーの10%以内: 低脂肪のものを選ぶ
  3. 適正体重を維持する: 肥満は最大のリスク因子
  4. 盗み食いを防止する: ゴミ箱にロック、テーブルの食べ物を片付ける
  5. 定期的な血液検査: 3〜6ヶ月ごとに中性脂肪・リパーゼをチェック
  6. 家族全員で食事ルールを共有する: 「おじいちゃんがこっそりあげていた」が再発の原因になることが多い

まとめ

犬の膵炎は、高脂肪食や肥満が最大のリスク因子であり、嘔吐・腹痛・食欲廃絶の三大症状が見られたら早急な受診が必要です。治療は輸液と対症療法が中心で、特効薬はありません。再発率が高いため、退院後の低脂肪食による食事管理と体重管理が極めて重要です。

「祈りのポーズ」(前足を伸ばして伏せ、腰を上げる姿勢)は強い腹痛のサインです。愛犬がこの姿勢をとっている場合は、すぐに動物病院を受診してください。


免責事項: この記事は獣医師監修のもと一般的な情報を提供するものであり、個別の診断・治療を行うものではありません。愛犬の状態に不安がある場合は、必ず動物病院を受診してください。

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