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犬の逆くしゃみの原因と対処法
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犬の逆くしゃみの原因と対処法

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監修: 監修獣医師(後日記入)

犬の逆くしゃみの原因と対処法|止め方・病院に行くべき症状を獣医師監修で解説

愛犬が突然「ブーブー」「フガフガ」と鼻を鳴らしながら、首を伸ばして苦しそうに息を吸い込む。発作のように見えるこの症状は**逆くしゃみ(リバーススニーズ)**と呼ばれ、多くの場合は一時的な生理現象です。しかし、頻度や持続時間、年齢によっては病気が隠れていることもあります。

この記事では、犬の逆くしゃみの原因・正しい止め方・病院に行くべき判断基準を獣医師監修のもと解説します。受診時に獣医師へ伝えるための「逆くしゃみチェックシート」も掲載しているので、ぜひ活用してください。


逆くしゃみ(リバーススニーズ)とは?仕組みをわかりやすく解説

逆くしゃみとは、通常のくしゃみが「鼻から勢いよく空気を吐き出す」反射であるのに対し、鼻から急激に空気を吸い込む発作的な呼吸反射のことです。英語では「Reverse Sneezing」と呼ばれます。

鼻の奥(鼻咽頭)や軟口蓋に何らかの刺激が加わると、その刺激を排除しようとして急速な吸気が起こります。見た目は非常に苦しそうですが、逆くしゃみの最中も気道は完全にはふさがっておらず、窒息することは基本的にありません。

逆くしゃみの典型的な症状

  • 口を閉じたまま、鼻から急速に空気を吸い込む
  • 首を前方に伸ばし、体をやや前傾させる
  • 「ブーブー」「ズーズー」「フガフガ」という音が出る
  • お腹や胸が大きく波打つように動く
  • 数秒から1分程度で自然に止まる
  • 発作の前後は普段通り元気に過ごしている

逆くしゃみが起こりやすい犬種

逆くしゃみはすべての犬種で起こり得ますが、鼻腔や気道の構造上、以下の犬種で頻度が高い傾向があります。

グループ 代表犬種 理由
短頭種 パグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、シーズー 鼻腔が短く軟口蓋が長いため、刺激を受けやすい
小型犬 チワワ、トイプードル、ポメラニアン、ヨークシャーテリア 鼻腔が小さく、わずかな刺激で反射が起こりやすい
ビーグル ビーグル 鼻咽頭の構造的な特性から起こりやすいとされる

犬の逆くしゃみの原因一覧

逆くしゃみの原因は、大きく「一時的な生理的原因」と「病気が関与する原因」に分けられます。

心配の少ない一時的・生理的な原因

ほこり・花粉・香料などの刺激物

空気中の微粒子が鼻粘膜を刺激して逆くしゃみを誘発します。掃除中や季節の変わり目(花粉シーズン)、芳香剤・アロマ・香水を使った部屋で起こりやすくなります。

急な温度変化

暖かい室内から冷たい外気に出たとき、エアコンの冷風や暖房の温風が直接鼻に当たったときに起こることがあります。鼻粘膜が急激な温度差に反応するためです。

興奮・運動後

散歩中や遊んで興奮したとき、食事直後などに起こることがあります。呼吸が激しくなることで鼻咽頭に刺激が加わりやすくなるためです。

リードによる喉への圧迫

首輪を使っている犬がリードを強く引っ張ったとき、喉への物理的な圧迫が逆くしゃみを引き起こすことがあります。頻繁に起こる場合はハーネスへの変更が有効です。

軟口蓋の一時的な張り付き

犬の軟口蓋(口の奥の柔らかい部分)が一時的に気道に張り付くことで逆くしゃみが生じます。特に短頭種や軟口蓋過長症の犬で多く見られます。

病気が関与する可能性がある原因

鼻腔内異物

草の種や小さな虫が鼻の中に入り込むと、持続的かつ頻回な逆くしゃみの原因になります。片方の鼻からだけ症状が出る場合は異物の可能性が高くなります。

鼻炎・副鼻腔炎

細菌やウイルスの感染による鼻の炎症が逆くしゃみを引き起こします。鼻水(特に黄色や緑色のもの)、くしゃみの増加、鼻血を伴う場合は受診が必要です。

鼻腔内腫瘍・ポリープ

中高齢の犬で逆くしゃみが急に増加した場合、鼻腔内の腫瘍やポリープが原因であることがあります。進行すると鼻血や顔面の変形を伴うこともあり、早期検査が重要です。

歯周病・歯根膿瘍

上顎の奥歯の根は鼻腔に近接しています。歯周病が進行して歯根に膿がたまると、鼻腔に波及して逆くしゃみや鼻水の原因になることがあります。

鼻腔内ダニ(Pneumonyssoides caninum)

鼻腔内にダニが寄生することで、逆くしゃみやくしゃみが起こるケースがまれに報告されています。

アレルギー性鼻炎

食物アレルギーや環境アレルギー(ハウスダスト、花粉、カビなど)による慢性的な鼻の炎症が、逆くしゃみの頻度を高めることがあります。


【年齢別】逆くしゃみの注意ポイント

犬の年齢によって、逆くしゃみの意味合いや注意すべき点が異なります。

子犬期(0歳〜1歳)

子犬は鼻咽頭の構造がまだ成熟しておらず、逆くしゃみの受容体感度が高い傾向があります。成長とともに鼻腔や気道が安定し、頻度が自然に減っていくケースが多いため、過度な心配は不要です。

ただし、以下には注意してください。

  • ワクチン接種が不十分な子犬で咳や鼻水を伴う場合は、**ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)**の可能性がある
  • 初めて逆くしゃみを見た場合は、てんかん発作や気管虚脱と見間違えないよう動画を撮影しておく

成犬期(1歳〜7歳)

以前からたまに起こる逆くしゃみで、1日3回未満、1回30秒〜1分で止まり、前後に元気であれば心配はほぼ不要です。

注意が必要なのは以下のケースです。

  • これまで起こらなかったのに急に頻度が増えた場合(環境変化・アレルギー発症の可能性)
  • 特定の季節に集中する場合(花粉やハウスダストなど環境アレルギーの可能性)

シニア期(7歳以上)

中高齢になってから新たに逆くしゃみが始まった場合は、生理的なものではなく病気のサインである可能性があります。特に以下を疑う必要があります。

  • 鼻腔内腫瘍: 高齢犬の逆くしゃみ増加で最も注意すべき疾患。鼻血を伴うことがある
  • 歯周病の進行: 高齢犬は歯周病の有病率が高く、上顎の歯根感染が鼻腔に波及しやすい
  • 心臓病に伴う咳との混同: 僧帽弁閉鎖不全症による咳を逆くしゃみと誤認するケースがある

シニア期に逆くしゃみが新たに出現した場合は、早めの受診をおすすめします。


病院に行くべき症状チェックリスト

以下のいずれかに当てはまる場合は、動物病院の受診を検討してください。

  • 逆くしゃみが1日に何度も繰り返す、または日を追うごとに頻度が増えている
  • 1回の逆くしゃみが2分以上止まらない
  • 鼻水が出ている(特に黄色・緑色・血液混じり)
  • 鼻血が出る
  • 片方の鼻だけから症状が出ている(異物・腫瘍の可能性)
  • 呼吸が常に苦しそう(安静時でもゼーゼー、ガーガーと音がする)
  • 食欲の低下元気の消失を伴う
  • 7歳以上で急に逆くしゃみが始まった
  • 口臭がひどい、歯茎の腫れがある(歯周病の関与の可能性)
  • 逆くしゃみのあとに失神や**チアノーゼ(舌や歯茎が青紫色になる)**が見られる

上記に当てはまらず、たまに数秒間の逆くしゃみが出る程度であれば、多くの場合は心配いりません。


受診時に役立つ「逆くしゃみチェックシート」

動物病院を受診する際、以下の情報を整理しておくと獣医師がスムーズに診断できます。受診前にメモしておくことをおすすめします。

確認項目 記入欄の目安
逆くしゃみが始まった時期 例: 1週間前から / 子犬の頃から
1日の発生回数 例: 1日2〜3回 / 週に数回
1回の持続時間 例: 10秒程度 / 1分以上
起こりやすい状況 例: 散歩後 / 食事後 / 寝起き / 掃除中
鼻水の有無と色 例: なし / 透明 / 黄色 / 血混じり
鼻血の有無 あり / なし
食欲・元気の変化 例: 変わりなし / やや食欲低下
口臭・歯茎の異常 例: なし / 口臭あり
最近の環境変化 例: 引っ越し / 芳香剤の使用開始 / 花粉の時期
症状の動画 撮影済み / 未撮影

動画撮影のポイント: 逆くしゃみが始まったら、慌てずにスマートフォンで撮影してください。犬の顔と胸の動きが見えるように、横から撮影すると獣医師が判断しやすくなります。音声も重要な手がかりになるため、録音もオンにしておきましょう。


逆くしゃみの止め方・落ち着かせる方法

逆くしゃみが起きたとき、以下の方法で早く止まることがあります。ただし、無理に行うと犬がパニックになる場合もあるため、落ち着いて対応してください。

方法1: 喉を優しくさする

犬の喉元を上から下に向かって優しくさすります。嚥下(飲み込み)動作を誘発することで、軟口蓋が正常な位置に戻り、逆くしゃみが止まることがあります。最も安全で取り組みやすい方法です。

方法2: 鼻を軽くふさぐ

犬の鼻の穴に指の腹をそっとあて、1〜2秒間だけ軽くふさぎます。口呼吸に切り替わることで反射がリセットされることがあります。長時間ふさぐと呼吸困難を起こす危険があるため、2秒以内にとどめてください。

方法3: 少量の水を飲ませる

手のひらに少量の水を乗せて飲ませると、嚥下反射によって逆くしゃみが止まることがあります。ただし、発作の最中に無理に飲ませると誤嚥のリスクがあるため、少し落ち着いてきたタイミングで行ってください。

方法4: そばで静かに見守る

多くの逆くしゃみは30秒〜1分で自然に止まります。飼い主が慌てると犬も不安を感じます。そばで静かに見守り、止まったら穏やかに声をかけてあげてください。

やってはいけないこと

  • 犬を叩いたり強く揺さぶったりする
  • 鼻を長時間(3秒以上)ふさぎ続ける
  • 大声で叱る、騒ぐ
  • 発作中に無理やり食べ物や水を口に入れる

逆くしゃみと間違えやすい病気の見分け方

逆くしゃみに似ているが、治療が必要な病気の可能性がある症状を知っておきましょう。

症状 音の特徴 口の状態 持続時間 疑われる疾患
逆くしゃみ 「ブーブー」「ズーズー」 口を閉じている 数秒〜1分 生理現象(多くの場合)
気管虚脱 「ガーガー」ガチョウの鳴き声のような音 口を開けている 数分以上続くことがある 気管虚脱(小型犬に多い)
心臓病の咳 乾いた咳、興奮時・夜間早朝に悪化 口を開けている 数分以上 僧帽弁閉鎖不全症
喉頭麻痺 高音のゼーゼー音(ストライダー) 口を開けている 持続的 喉頭麻痺(大型犬・高齢犬)
てんかん発作 呼吸音というより痙攣 意識消失あり 数十秒〜数分 てんかん

見分けるポイントは「口の開閉」と「持続時間」です。 逆くしゃみは口を閉じたまま起こり、1分以内に自然に止まります。一方、気管虚脱や心臓病の咳は口を開けた状態で起こり、数分以上続くことがあります。

判別が難しい場合は、症状が出ているときの動画を撮影して動物病院に持参してください。動画があると獣医師の診断精度が大幅に向上します。


逆くしゃみの予防・頻度を減らすためにできること

逆くしゃみを完全に予防することは難しいですが、誘因を減らすことで頻度を下げられる場合があります。

室内環境の整備

  • こまめな掃除でほこりや花粉を減らす
  • 空気清浄機を活用する
  • 加湿器で適切な湿度(40〜60%)を保つ
  • 香水、芳香剤、アロマ、タバコの煙を避ける

散歩・外出時の工夫

  • 首輪からハーネスに変更し、喉への圧迫を減らす
  • 花粉の多い時期は散歩後に顔周りを拭く
  • 急な温度変化を避ける(冬は玄関で少し慣らしてから外出)

定期的な健康管理

  • 歯磨きや歯科検診で歯周病を予防する
  • 定期的な健康診断(特にシニア期は年2回推奨)
  • アレルギーが疑われる場合は獣医師に相談する

まとめ

  • 逆くしゃみは鼻から急激に空気を吸い込む反射的な呼吸で、多くの場合は一時的な生理現象
  • 短頭種や小型犬で起こりやすく、ほこり・花粉・興奮・温度変化などが誘因になる
  • 1回30秒〜1分で自然に止まり、前後に元気であれば基本的に心配不要
  • 頻度の増加、2分以上の持続、鼻水・鼻血の併発、7歳以上での急な発症は動物病院を受診
  • 子犬は成長で改善することが多いが、シニア犬の新規発症は病気のサインの可能性がある
  • 喉をさする、鼻を軽くふさぐなどの方法で早く止まることがある
  • 症状の動画撮影が獣医師の診断に非常に役立つ

よくある質問(FAQ)

逆くしゃみで犬が死んでしまうことはありますか?

逆くしゃみそのもので犬が命を落とすことは通常ありません。逆くしゃみは鼻咽頭の反射反応であり、気道が完全にふさがるわけではないため、窒息の心配は基本的に不要です。ただし、逆くしゃみだと思っていた症状が実は気管虚脱や喉頭麻痺など別の疾患だった場合は治療が必要になります。判別が難しいときは動画を撮影して獣医師に見せてください。

逆くしゃみと気管虚脱はどう見分けますか?

最も簡単な見分け方は「口の開閉」と「音の質」です。逆くしゃみは口を閉じたまま「ブーブー」「ズーズー」という音が出て、数十秒で自然に止まります。一方、気管虚脱は口を開けた状態で「ガーガー」とガチョウの鳴き声のような乾いた音が出て、興奮時や運動時、暑い日に悪化し、数分以上続くことがあります。確定診断にはレントゲンや内視鏡などの検査が必要です。

逆くしゃみが毎日起こります。病院に行くべきですか?

毎日のように逆くしゃみが起こる場合は、一度動物病院を受診することをおすすめします。生理的な逆くしゃみで毎日1日3回以上発生することはまれです。鼻腔内の異物、アレルギー性鼻炎、鼻腔内ポリープなどが隠れている可能性があります。特に以前はなかったのに急に増えた場合や、鼻水・鼻血を伴う場合は早めの受診が望ましいです。

子犬の逆くしゃみは放っておいて大丈夫ですか?

子犬でも逆くしゃみは起こります。子犬期は鼻咽頭の受容体感度が高い傾向があり、成長とともに頻度が減っていくことが多いため、過度な心配は不要です。ただし、ワクチン接種が不十分な子犬で咳や鼻水を伴う場合はケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)の可能性があるため、獣医師に相談してください。

老犬で逆くしゃみが急に始まりました。危険ですか?

中高齢になってから新たに逆くしゃみが始まった場合は、鼻腔内腫瘍、歯周病の進行、アレルギー性鼻炎など、何らかの病気が原因である可能性があります。鼻血を伴う場合は特に早急な受診が必要です。シニア期の新規発症は生理的なものとは考えにくいため、早めに動物病院を受診しましょう。

逆くしゃみの予防方法はありますか?

完全な予防は難しいですが、誘因を減らすことで頻度を下げられます。部屋のこまめな掃除、空気清浄機の使用、芳香剤やアロマの使用を控える、首輪をハーネスに変える、急な温度変化を避けるなどが有効です。アレルギーが原因の場合は、獣医師と相談して抗ヒスタミン薬などの治療を検討することもあります。


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