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柴犬がかかりやすい病気と飼い主が知るべきこと【獣医師監修】
犬の健康

柴犬がかかりやすい病気と飼い主が知るべきこと【獣医師監修】

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監修: 監修獣医師(後日記入)

柴犬がかかりやすい病気と飼い主が知るべきこと【獣医師監修】

柴犬は日本犬の中で最も飼育頭数が多く、海外でも「Shiba Inu」として高い人気を誇る犬種です。忠実で独立心が強く、丈夫な体質を持つ印象のある柴犬ですが、犬種としてかかりやすい病気が複数存在します。

特に皮膚のトラブルは柴犬の飼い主の悩みのトップに挙がることが多く、また高齢期には認知症のリスクも他犬種と比較して高いとされています。この記事では、柴犬の飼い主が知っておくべき代表的な病気の症状・治療法・予防法を獣医師監修のもとで詳しく解説します。

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この記事のポイント

  • 柴犬はアレルギー性皮膚炎の好発犬種。アトピーと食物アレルギーの両方に注意
  • 高齢の柴犬は認知症(認知機能不全症候群)のリスクが特に高い
  • 膝蓋骨脱臼は柴犬でも発症する。フローリング対策が重要
  • 白内障は加齢に伴い発症率が上がる。早期発見で進行を遅らせられる
  • 甲状腺機能低下症は中高齢で発症しやすく、元気がなくなる・太りやすくなる
  • 柴犬は病院嫌いの個体が多いため、子犬期からの慣らしが重要

柴犬の身体的・性格的特徴と病気の関係

柴犬の病気の傾向を理解するには、犬種としての特徴を知ることが重要です。

特徴 関連する疾患リスク
ダブルコートの被毛 皮膚の通気性が悪く、皮膚トラブルが起こりやすい。換毛期の手入れ不足は皮膚炎を悪化させる
アレルギー体質の個体が多い アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの好発犬種
中型犬(8~12kg) 膝蓋骨脱臼は小型犬に比べ頻度は低いが発症する個体がいる
日本犬としての遺伝的素因 高齢期の認知症発症率が洋犬と比較して高い
独立心が強い性格 動物病院や検査を極端に嫌がる個体が多く、診察・治療に難渋する場合がある
平均寿命13~16歳 比較的長寿な犬種のため、加齢性疾患(白内障、認知症等)に向き合う期間が長い

1. アレルギー性皮膚炎

概要

柴犬は皮膚疾患の中でも特にアレルギー性皮膚炎にかかりやすい犬種です。「アトピー性皮膚炎」と「食物アレルギー」の2つが代表的であり、両方を併発している個体も珍しくありません。動物病院の皮膚科を受診する犬種の中で、柴犬は常に上位に位置しています。

アトピー性皮膚炎

環境中のアレルゲン(ハウスダスト、花粉、カビなど)に対して免疫が過剰反応することで起こる慢性の皮膚炎です。

項目 内容
好発年齢 1~3歳で発症することが多い
主な症状 顔(目や口の周り)、脇の下、足先、腹部の激しい痒み。赤み、脱毛、皮膚の肥厚
季節性 花粉が原因の場合は春~秋に悪化。ハウスダストが原因の場合は通年
診断方法 症状の分布パターン、除外診断、アレルギー検査(血液検査、皮内テスト)

食物アレルギー

特定の食材(牛肉、鶏肉、小麦、大豆、乳製品など)に対して免疫が反応することで起こる皮膚炎です。

  • 季節に関係なく通年で症状が出る
  • 皮膚症状に加えて、下痢や嘔吐などの消化器症状を伴うことがある
  • 除去食試験(8~12週間のフード変更)で原因食材を特定する

治療法

アレルギー性皮膚炎の治療は完治を目指すというよりも、症状をコントロールして犬のQOLを維持することが目標です。

  • 内服薬: ステロイド、シクロスポリン、オクラシチニブ(アポキル)、抗ヒスタミン薬
  • 外用薬: ステロイドスプレー、保湿剤
  • 薬用シャンプー: 抗菌・抗真菌シャンプーで皮膚の清潔を保つ
  • 食事療法: アレルゲン除去食、加水分解タンパク食への切り替え
  • 減感作療法: アレルゲンを少量ずつ投与して体を慣れさせる(長期的な治療法)

治療費は月額5,000~30,000円程度が目安ですが、症状の重さや治療法によって大きく異なります。

予防・日常ケア

  • 定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保つ(ただし洗いすぎは皮膚のバリア機能を損なう)
  • 換毛期はこまめにブラッシングし、抜け毛を除去して通気性を確保する
  • 室内の清掃をこまめに行い、ハウスダストを減らす
  • 皮膚を掻きむしって傷にならないよう、爪を短く切っておく
  • 痒みが強い場合は早めに動物病院を受診する(掻き壊しによる二次感染を防ぐ)

2. 認知症(認知機能不全症候群)

概要

認知機能不全症候群(CDS: Cognitive Dysfunction Syndrome)は、加齢に伴い脳の認知機能が低下する疾患です。人間のアルツハイマー病に類似した病態とされています。柴犬を含む日本犬は、洋犬と比較してCDSの発症率が高いという研究報告があり、11歳以上の柴犬の約30%に何らかの認知機能の低下が見られるとする調査もあります。

症状

認知症の症状は「DISHA」という頭文字で整理されます。

頭文字 英語 症状
D Disorientation(見当識障害) 家の中で迷う、いつもの散歩コースがわからなくなる
I Interaction changes(社会的交流の変化) 飼い主への反応が鈍くなる、名前を呼んでも反応しない
S Sleep-wake cycle changes(睡眠・覚醒サイクルの変化) 夜中に起きて徘徊する、昼夜逆転
H House soiling(排泄の失敗) トイレの場所を忘れる、室内での粗相が増える
A Activity changes(活動性の変化) ぼんやりする時間が増える、目的なく同じ場所をぐるぐる歩く

特に柴犬では「夜鳴き」と「ぐるぐる歩き(旋回行動)」が顕著に見られることが多く、飼い主の大きな負担となっています。

治療法

認知症を根本的に治す治療法は現時点では存在しませんが、進行を遅らせ、症状を緩和することは可能です。

  • サプリメント: DHA・EPA(オメガ3脂肪酸)、抗酸化物質(ビタミンE、セレン)
  • 処方薬: セレギリン(脳内ドーパミン濃度を高める薬)
  • 食事療法: 抗酸化物質や中鎖脂肪酸(MCT)を含む療法食
  • 環境の工夫: 生活パターンを規則正しく保つ、夜間の照明を調整する、安全な徘徊スペースを確保する

予防

  • 脳への刺激を与える活動(知育玩具、新しい散歩コース、トレーニング)を日常的に取り入れる
  • DHAやEPAを含むフードやサプリメントを中高齢期から摂取させる
  • 適度な運動を継続する
  • 7歳以降は半年に1回の健康診断で認知機能のチェックを含める

3. 膝蓋骨脱臼(パテラ)

概要

膝蓋骨脱臼はトイプードルなどの小型犬に多い疾患ですが、柴犬でも発症する個体がいます。柴犬の場合、先天的な骨格の問題よりも、フローリングの床での生活による膝への繰り返しの負荷が発症の引き金になるケースが多いとされています。

症状と治療

症状やグレード分類は小型犬と同様で、軽度であれば保存療法、グレード3以上では外科手術が検討されます。柴犬は体重が812kgと小型犬より重いため、膝への負荷が大きく、一度脱臼すると症状が進行しやすい傾向があります。手術費用は片足で2040万円程度です。

予防法

  • フローリングの床にはマットやカーペットを敷く
  • 適正体重を維持する(柴犬は太りやすい犬種でもある)
  • 階段の昇り降りを最小限にする
  • ジャンプを伴う激しい運動は避ける

4. 白内障

概要

白内障は眼のレンズ(水晶体)が白く濁り、視力が低下する疾患です。柴犬では加齢性白内障が多く、8歳以降に発症率が上がります。また、若年性白内障(遺伝性)が見られることもあります。糖尿病を合併している場合は白内障の進行が速くなります。

症状

進行段階 症状
初期(初発白内障) 水晶体の一部が薄く曇る。視力への影響はほぼなし
中期(未熟白内障) 水晶体の曇りが広がる。薄暗い場所での視力低下
成熟白内障 水晶体全体が白く曇る。視力が大幅に低下。瞳孔が白く見える
過熟白内障 水晶体が縮小・変形する。ぶどう膜炎や緑内障を合併するリスク

日常生活では以下のサインに注意してください。

  • 物にぶつかることが増える
  • 暗い場所を嫌がる
  • 階段を怖がるようになる
  • 目の中が白っぽく見える
  • 散歩中に不安そうにする

治療法

初期段階では点眼薬(ピレノキシン)で進行を遅らせることが可能です。成熟白内障に達した場合は外科手術(水晶体超音波乳化吸引術+人工レンズ挿入)が視力回復の唯一の方法です。手術費用は片眼で20~40万円程度が目安です。

予防

加齢性白内障を完全に予防することは困難ですが、以下の点が進行を遅らせる可能性があります。

  • 抗酸化物質を含む食事を心がける
  • 紫外線の強い時間帯の散歩を避ける
  • 糖尿病の管理を適切に行う
  • 定期的な眼科検診を受ける(特に8歳以降)

5. 甲状腺機能低下症

概要

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下することで全身の代謝が落ちる疾患です。柴犬は中高齢(5~8歳以降)で発症することが多く、症状がゆっくり進行するため、飼い主が「年齢のせい」と見過ごしてしまうケースが少なくありません。

症状

カテゴリ 具体的な症状
全身 元気がない、動きたがらない、寒がる
体重 食事量は変わらないのに太る
皮膚・被毛 毛が薄くなる、毛艶がなくなる、皮膚が黒ずむ、尾の毛が抜ける(ラットテール)
顔面 顔がむくむ(粘液水腫)、「悲しそうな顔」と表現されることがある
精神面 反応が鈍くなる、覇気がなくなる

診断と治療

血液検査で甲状腺ホルモン(T4、fT4)の値を測定して診断します。治療は合成甲状腺ホルモン(レボチロキシン)の経口投与で、投薬は基本的に生涯にわたって継続する必要があります。

治療を開始すると、多くの犬で24週間以内に元気が戻り、数ヶ月かけて被毛や体重も改善していきます。投薬費用は月額3,0005,000円程度です。

予防

甲状腺機能低下症そのものの予防は困難ですが、早期発見のために以下を心がけてください。

  • 中高齢期(5歳以降)は年1回の血液検査に甲状腺ホルモンの項目を含める
  • 「元気がない」「太ってきた」「毛が薄くなった」は年齢のせいと決めつけず、動物病院に相談する

柴犬特有の課題: 病院嫌いへの対応

柴犬は独立心が強く警戒心も高い犬種であるため、動物病院での診察や検査を極端に嫌がる個体が少なくありません。暴れたり噛みついたりして診察ができないケースもあります。

この「柴犬の病院嫌い」に対しては、以下の対策が有効です。

  • 子犬期からの社会化: 子犬のうちから動物病院を「怖くない場所」として慣れさせる。診察がなくても体重測定だけの訪問を重ねる
  • 口輪の練習: 口輪に慣れさせておくと、万が一のときに安全に診察を受けられる
  • かかりつけ医の固定: 同じ獣医師に定期的に診てもらうことで、犬が慣れやすくなる
  • 鎮静剤の活用: 恐怖心が極端に強い犬には、事前に鎮静剤を使用してから診察を行う方法もある

よくある質問(FAQ)

Q1. 柴犬の皮膚が赤くて痒がっています。まず何をすべきですか?

まずは動物病院を受診し、アレルギー性皮膚炎なのか、細菌感染(膿皮症)や真菌感染なのか、ノミ・ダニが原因なのかを鑑別してもらうことが最優先です。アレルギー性皮膚炎は見た目だけでは原因を特定できないため、血液検査や除去食試験が必要になることがあります。自己判断で市販の薬を塗ることは、症状を悪化させたり診断を困難にしたりするリスクがあるため避けてください。

Q2. 柴犬の認知症は予防できますか?

認知症の発症を完全に防ぐことは現時点では困難ですが、脳に刺激を与える生活を続けることで発症を遅らせたり、症状を軽度に抑えたりできる可能性があります。具体的には、知育玩具を活用する、散歩コースを変える、他の犬との交流を持つ、DHAやEPAを含むフードを与えるなどが推奨されています。7歳を過ぎたら認知機能のチェックを健康診断に含めることをおすすめします。

Q3. 柴犬は丈夫で病気になりにくいと聞きました。本当ですか?

確かに柴犬は日本の気候に適応した丈夫な犬種とされていますが、「病気になりにくい」というのは正確ではありません。この記事で紹介したように、アレルギー性皮膚炎、認知症、膝蓋骨脱臼、白内障、甲状腺機能低下症など、柴犬に多い疾患は複数存在します。「丈夫だから大丈夫」と過信せず、定期的な健康診断と日常の健康観察を欠かさないことが重要です。


まとめ

柴犬は日本を代表する犬種であり、忠実で美しい犬ですが、アレルギー性皮膚炎を筆頭にかかりやすい病気があります。特に皮膚の痒みは柴犬の飼い主にとって最も多い悩みであり、早期から適切な治療を始めることで犬の苦痛を軽減できます。

高齢期には認知症のリスクが高まるため、中年期からの予防的な取り組みが重要です。定期的な健康診断、日常の観察、そして柴犬特有の病院嫌いへの対策を講じることで、愛犬の健康寿命を延ばすことにつながります。

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