犬のワクチンの種類と選び方|コア・ノンコアの違いと混合ワクチンの本数を獣医師監修で解説
この記事のポイント: 犬のワクチンは「コアワクチン(全犬必須)」と「ノンコアワクチン(生活環境で選択)」に分かれます。2024年改訂のWSAVAガイドラインではコアワクチンの接種間隔が3年以上に。混合ワクチン6パターンの比較と生活スタイル別選び方を獣医師監修で解説します。
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「犬のワクチンって何種を打てばいいの?」「5種と8種は何が違うの?」 -- 動物病院でワクチンの案内を受けたとき、多くの飼い主がこの疑問を持ちます。
結論から言うと、犬のワクチンは「コアワクチン(全ての犬に必須)」と「ノンコアワクチン(生活環境に応じて選択)」の2種類に分かれており、愛犬の生活スタイルに合わせて最適な組み合わせを選ぶことが重要です。 2024年に改訂されたWSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドラインでは、コアワクチンの接種間隔についても新しい考え方が示されています。
この記事では、混合ワクチンの全6パターンの違い、生活スタイル別の選び方、そして「毎年打つべきか」という疑問への最新の回答まで、犬のワクチンに関する情報を網羅的に解説します。
コアワクチンとノンコアワクチンの違い
犬のワクチンを理解するうえで最も大切なのが、「コア」と「ノンコア」の区分です。
コアワクチン -- 全ての犬に接種が推奨される
コアワクチンは、感染した場合に重篤な症状を引き起こし、致死率も高い感染症を予防するワクチンです。生活環境にかかわらず、全ての犬に接種が推奨されています。
| 疾患名 | 病原体 | 主な症状 | 致死率 |
|---|---|---|---|
| 犬ジステンパー | 犬ジステンパーウイルス(CDV) | 高熱、鼻水、咳、下痢、神経症状(けいれん) | 50~90% |
| 犬伝染性肝炎 | 犬アデノウイルス1型(CAV-1) | 発熱、嘔吐、下痢、黄疸、肝不全 | 10~30% |
| 犬アデノウイルス2型感染症 | 犬アデノウイルス2型(CAV-2) | 咳、鼻水(犬伝染性喉頭気管炎) | 低いが二次感染で重篤化 |
| 犬パルボウイルス感染症 | 犬パルボウイルス2型(CPV-2) | 激しい嘔吐・血便、急激な脱水 | 子犬で91%、成犬でも10~30% |
犬パルボウイルスは環境中で数ヶ月~数年間生存するため、「散歩に行かないから大丈夫」とは言えません。 飼い主の靴底や衣類に付着して室内に持ち込まれるリスクがあります。
ノンコアワクチン -- 生活環境に応じて選択する
ノンコアワクチンは、愛犬の生活スタイルや住んでいる地域のリスクに応じて接種を検討するワクチンです。
| 疾患名 | 病原体 | リスクが高い環境 | 接種の目安 |
|---|---|---|---|
| レプトスピラ症 | レプトスピラ属細菌 | 水田・河川敷の散歩、キャンプ、野生動物との接触 | 農村部・郊外在住、アウトドア派 |
| 犬パラインフルエンザ | 犬パラインフルエンザウイルス(CPiV) | ドッグラン、ペットホテル、犬の幼稚園 | 他の犬との接触機会が多い |
| 犬ボルデテラ(ケンネルコフ) | 気管支敗血症菌 | ペットショップ、シェルター、多頭飼育 | 集団飼育環境にいる犬 |
| 犬コロナウイルス感染症 | 犬コロナウイルス(CCoV) | 一般的にリスクは低い | WSAVAは推奨していない |
レプトスピラは人にも感染する人獣共通感染症です。 水辺の散歩やキャンプが好きな飼い主は、自身の安全のためにも愛犬への接種を検討してください。
狂犬病ワクチンは法律で義務付けられている
日本では狂犬病予防法により、生後91日以上の犬は年1回の狂犬病ワクチン接種が義務付けられています。これは混合ワクチンとは別に接種する必要があります。
混合ワクチンの種類を徹底比較|2種から10種まで何が違う?
動物病院で提案される「〇種混合ワクチン」は、上記の感染症を組み合わせたものです。以下に全パターンの含有疾患を比較します。
| 対象疾患 | 2種 | 5種 | 6種 | 7種 | 8種 | 10種 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ジステンパー | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| パルボウイルス | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| アデノウイルス1型(肝炎) | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| アデノウイルス2型 | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| パラインフルエンザ | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| コロナウイルス | - | - | ○ | - | ○ | ○ |
| レプトスピラ(2血清型) | - | - | - | ○ | ○ | - |
| レプトスピラ(4血清型) | - | - | - | - | - | ○ |
| ワクチンの位置づけ | コアのみ | コア+1 | コア+2 | コア+L2 | コア+2+L2 | コア+2+L4 |
注意: メーカーや動物病院によって組み合わせが異なる場合があります。正確な内容はかかりつけの獣医師に確認してください。
各ワクチンの特徴まとめ
- 2種: コアワクチンのみ。子犬の初回接種や高齢犬に使用されることが多い
- 5種: 最も基本的な選択肢。室内飼いで他の犬との接触が少ない犬に
- 6種: 5種にコロナウイルスを追加。ただしWSAVAはコロナウイルスワクチンの必要性に疑問を呈している
- 7種: 5種にレプトスピラ2型を追加。水辺の散歩がある犬に
- 8種: 5種にコロナウイルスとレプトスピラ2型を追加
- 10種: 5種にコロナウイルスとレプトスピラ4型を追加。最も広範な予防
生活スタイル別ワクチン選択ガイド
「結局、うちの犬には何種が合っているの?」という疑問に答えるため、生活スタイル別の推奨パターンをまとめました。
タイプA: インドア派(室内中心・近所の散歩のみ)
推奨: 5種混合ワクチン
- 他の犬との濃厚接触が少ない
- 水辺のレジャーに行かない
- ドッグランやペットホテルを利用しない
タイプB: アクティブ派(ドッグラン・ペットホテル利用あり)
推奨: 7種または8種混合ワクチン
- ドッグラン、犬の幼稚園、ペットホテルを定期的に利用する
- 他の犬との接触機会が多い
- 施設によっては5種以上のワクチン接種証明を求められることがある
タイプC: アウトドア派(キャンプ・川遊び・山歩き)
推奨: 8種または10種混合ワクチン
- キャンプ、川遊び、山歩きに犬を連れていく
- 水田地帯や河川敷の散歩が多い
- 野生動物(ネズミ等)と接触する可能性がある
- レプトスピラの感染リスクが高いため、より多くの血清型をカバーする10種が安心
タイプD: 多頭飼い・保護犬
推奨: 8種以上 + ケンネルコフワクチン(単独)の検討
- 犬同士の密接な接触がある
- 1頭が感染すると全頭に広がるリスク
- 保護犬は過去の接種歴が不明なことが多い
WSAVA 2024ガイドラインで変わったワクチン接種の考え方
2024年に改訂されたWSAVA(世界小動物獣医師会)のワクチネーションガイドラインでは、犬のワクチン接種について重要な変更がありました。
コアワクチンは「3年以上の間隔」が国際標準に
従来の「毎年接種」から、コアワクチン(ジステンパー・アデノウイルス・パルボ)は免疫持続期間が3年以上あることが科学的に確認されています。WSAVAは成犬に対して3年以上の間隔での接種を推奨しています。
ただし注意点があります。
- ノンコアワクチン(レプトスピラ等)は毎年接種が必要 -- 免疫持続期間が短いため
- 日本の動物病院では対応が分かれている -- 従来の毎年接種を続ける病院と、ガイドラインに準拠した病院がある
- 狂犬病ワクチンは日本の法律で年1回が義務 -- WSAVAの推奨とは別の問題
子犬のワクチンプログラムも変更
2024年ガイドラインでは、子犬のワクチン接種スケジュールについても重要な変更がありました。
| 接種回 | 従来のスケジュール | 2024年ガイドライン |
|---|---|---|
| 1回目 | 生後8週齢(2ヶ月) | 生後6~8週齢 |
| 2回目 | 生後12週齢(3ヶ月) | 生後3ヶ月 |
| 3回目 | 生後16週齢(4ヶ月) | 生後4ヶ月 |
| 4回目 | 1歳 | 生後6ヶ月(新設) |
| ブースター | - | 1歳 |
生後6ヶ月の追加接種が新設された理由は、母犬からの移行抗体が予想より長く残る子犬がいるためです。 4ヶ月齢の接種時に移行抗体が残っていると、ワクチンの効果が十分に得られない場合があります。6ヶ月齢で追加接種することで、この「免疫の空白期間」をカバーします。
抗体検査という選択肢
WSAVAは、ワクチンを打つ前に抗体検査(血清学的検査)で免疫の有無を確認することを推奨しています。
抗体検査のメリットは以下のとおりです。
- 不要なワクチン接種を避けられる -- 十分な抗体がある場合はワクチンを打たなくてよい
- ワクチンの副反応リスクを減らせる -- 特にアレルギー体質の犬に有効
- 免疫状態を「見える化」できる -- 確実に予防できているか確認できる
抗体検査の費用は動物病院により異なりますが、5,000~10,000円程度が目安です。院内で20分程度で結果が出る簡易キット(ワクチチェック等)を導入している病院も増えています。
ただし、抗体検査で測定できるのはコアワクチン3種(ジステンパー・アデノウイルス・パルボ)のみです。 レプトスピラやパラインフルエンザの抗体は測定が難しいため、これらのノンコアワクチンについては生活環境に応じた定期接種が基本です。
ワクチン接種の副反応と注意点
ワクチンは感染症を予防するために重要ですが、副反応のリスクもゼロではありません。
よくある副反応(接種後24時間以内)
- 軽度: 元気がない、食欲低下、接種部位の腫れ・痛み -- 多くは1~2日で自然に改善
- 中程度: 嘔吐、下痢、顔の腫れ(ムーンフェイス) -- 動物病院に連絡を
- 重度(アナフィラキシー): 呼吸困難、虚脱、意識低下 -- 即座に救急受診が必要
副反応リスクを下げるポイント
- 接種後30分は動物病院内で様子を見る -- アナフィラキシーは接種後30分以内に起こることが多い
- 午前中に接種する -- 午後に体調変化があっても診療時間内に対応できる
- 接種当日は激しい運動・シャンプーを避ける
- 体調が万全なときに接種する -- 下痢や食欲不振がある場合は延期を検討
副反応リスクが高い犬種
小型犬(特にダックスフンド、チワワ、ミニチュアシュナウザー)は、体重あたりの抗原量が相対的に多くなるため副反応リスクがやや高いとされています。これらの犬種では、獣医師と相談のうえ、接種する本数を必要最小限に抑えることを検討してもよいでしょう。
犬種別・年齢別のワクチン選びの注意点
子犬(~1歳)
- 母犬からの移行抗体が切れるタイミングに合わせた接種が重要
- ワクチンプログラムが完了するまで、不特定多数の犬との接触は控える
- 社会化期との兼ね合いで獣医師と相談を
成犬(1~6歳)
- コアワクチンは抗体検査の結果に基づいて接種間隔を決定
- ノンコアワクチンは生活スタイルの変化に応じて見直す
- 毎年の接種が本当に必要か、獣医師に相談する価値あり
シニア犬(7歳~)
- 免疫機能が低下するため、抗体検査で免疫状態を確認することが特に重要
- 不必要なワクチン接種は体への負担になる場合がある
- 持病がある場合は接種の可否を獣医師に判断してもらう
注意が必要な犬種
- ワイマラナー: 免疫介在性多発性関節炎のリスクがあるため、不必要な接種は避ける
- 小型犬全般: 副反応リスクが相対的に高い
- 免疫抑制剤を服用中の犬: 生ワクチンは禁忌の場合がある
よくある質問(FAQ)
Q1: 犬のワクチン接種にかかる費用はどのくらいですか?
A1: 混合ワクチンの接種費用は種類と動物病院によって異なりますが、5種混合で5,0008,000円、8種混合で7,00010,000円、10種混合で8,00012,000円が一般的な目安です。狂犬病ワクチン(法定義務)は注射済票交付手数料込みで3,0004,000円程度です。抗体検査は5,000~10,000円程度です。詳しくは「犬のワクチン料金の相場と種類の選び方」をご覧ください。
Q2: 室内犬でもワクチンは必要ですか?
A2: はい、コアワクチンは室内飼いでも必要です。 パルボウイルスは環境中で数ヶ月~数年間生存し、飼い主の靴底や衣類に付着して室内に持ち込まれます。また、急な入院やペットホテル利用が必要になった場合、ワクチン接種証明が求められることがほとんどです。
Q3: 混合ワクチンは多い方が安心ですか?
A3: 必ずしもそうとは言えません。 ワクチンの本数が多いほどカバーする感染症は増えますが、同時にアレルギー反応のリスクもわずかに高くなります。大切なのは愛犬の生活環境に本当に必要なワクチンを選ぶことです。上記の生活スタイル別選択ガイドを参考に、獣医師と相談してください。
Q4: 犬のワクチンは毎年打つ必要がありますか?
A4: WSAVA 2024ガイドラインでは、コアワクチン(ジステンパー・アデノウイルス・パルボ)は免疫持続期間が3年以上あることが確認されており、成犬は3年以上の間隔での接種が推奨されています。ただし、ノンコアワクチン(レプトスピラ等)は免疫持続期間が短いため毎年接種が必要です。抗体検査(5,000~10,000円)で免疫状態を確認してから判断する方法もあります。
Q5: 子犬のワクチンはいつから、何回打てばよいですか?
A5: WSAVA 2024ガイドラインでは、生後6~8週齢で1回目、その後3ヶ月・4ヶ月・6ヶ月(新設)・1歳でブースター接種と、計5回の接種が推奨されています。ワクチンプログラムが完了するまで不特定多数の犬との接触は控えつつ、社会化期との兼ね合いも考慮して獣医師と相談してください。
Q6: 他の犬との接触がなければノンコアワクチンは不要ですか?
A6: レプトスピラについては、他の犬との接触がなくてもリスクがあります。レプトスピラは野生動物(ネズミ等)の尿で汚染された水たまりや土壌から感染するため、散歩コースに水辺や緑地がある場合は接種を検討してください。レプトスピラは人にも感染する人獣共通感染症です。
まとめ|愛犬のワクチン選びチェックリスト
犬のワクチン選びで迷ったら、以下のチェックリストを参考にしてください。
- コアワクチン(ジステンパー・アデノウイルス・パルボ)は全ての犬に必須
- 生活スタイルに合わせてノンコアワクチンを選ぶ -- ドッグラン利用なら7種以上、キャンプ派なら8~10種を検討
- WSAVA 2024ガイドラインではコアワクチンの接種間隔は3年以上 -- 抗体検査で免疫状態を確認する方法もある
- ノンコアワクチン(レプトスピラ等)は毎年接種が必要
- 副反応リスクを考慮し、必要最小限の組み合わせを獣医師と相談
参考文献
- WSAVA Vaccination Guidelines Group. "WSAVA Guidelines for the Vaccination of Dogs and Cats." 2024年改訂版. https://wsava.org/guidelines/vaccination-guidelines/
- 日本獣医師会. 「犬と猫のワクチネーションガイドライン」. https://www.nichiju.or.jp/
- Day MJ, et al. "WSAVA Guidelines for the vaccination of dogs and cats." Journal of Small Animal Practice, 2024.
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この記事は獣医師の監修のもと作成されています。ただし、ワクチンの種類・スケジュールは愛犬の年齢・健康状態・生活環境によって最適解が異なります。必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
最終更新: 2026年4月2日