子犬のワクチンスケジュール 接種時期と費用【獣医師監修】
子犬を迎えたら、最初に取り組むべき健康管理の一つがワクチン接種です。ワクチンは犬ジステンパー、犬パルボウイルス感染症、犬伝染性肝炎など、命に関わる感染症から子犬を守るための最も効果的な予防手段です。
しかし、「何回打てばいいの?」「いつから散歩に行ける?」「混合ワクチンは何種を選べばいい?」「費用はどれくらいかかる?」など、初めて犬を飼う方にとっては疑問が多いテーマでもあります。
この記事では、子犬のワクチン接種の基本スケジュール、ワクチンの種類と選び方、費用の目安、接種後の注意点、副反応への対処法まで、獣医師監修のもとで体系的に解説します。
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この記事のポイント
- 子犬のワクチンは生後6
8週齢から開始し、34週間隔で2~3回接種する- 最終接種は生後16週齢以降に行うことが重要(母親からの移行抗体が消失するため)
- 混合ワクチンはコアワクチン(必須)とノンコアワクチン(任意)に分かれる
- 狂犬病ワクチンは法律で年1回の接種が義務付けられている
- ワクチン接種完了まで他の犬との接触や散歩は控える
- 接種後24時間は安静にし、副反応の兆候に注意する
- 費用は混合ワクチン1回あたり5,000~10,000円が目安
ワクチンが必要な理由
移行抗体と免疫の空白期間
子犬は母犬から初乳を通じて「移行抗体」を受け取ります。この移行抗体は生後しばらくの間、感染症から子犬を守ってくれますが、生後6~16週にかけて徐々に減少し、最終的に消失します。
移行抗体が減少してから、ワクチンによる能動免疫(自分の体で作る免疫)が十分に確立されるまでの間に「免疫の空白期間」が生じます。この空白期間に感染症にかかると、子犬は十分な免疫を持たないため重症化するリスクが高くなります。
ワクチンを複数回接種する理由は、この移行抗体の減少タイミングが個体によって異なるためです。移行抗体が残っている状態でワクチンを打っても、移行抗体がワクチンの効果を打ち消してしまうことがあります。そのため、移行抗体が確実に消失している時期(生後16週齢以降)まで繰り返し接種し、確実に免疫を獲得させる必要があるのです。
ワクチンで予防できる主な感染症
| 感染症 | 致死率 | 主な症状 | 感染経路 |
|---|---|---|---|
| 犬ジステンパー | 50~90% | 発熱、鼻水、下痢、神経症状 | 空気感染、接触感染 |
| 犬パルボウイルス感染症 | 無治療で90%以上 | 激しい嘔吐、血便、急激な脱水 | 糞便からの経口感染 |
| 犬伝染性肝炎 | 10~30% | 発熱、嘔吐、黄疸、肝不全 | 尿・唾液からの接触感染 |
| 犬パラインフルエンザ | 低い | 咳、鼻水(ケンネルコフの原因の一つ) | 空気感染 |
| 犬レプトスピラ症 | 10~20% | 発熱、嘔吐、黄疸、腎不全 | 汚染された水・土壌 |
| 犬コロナウイルス感染症 | 低い | 下痢、嘔吐(特に子犬で重症化) | 糞便からの経口感染 |
| 狂犬病 | ほぼ100% | 神経症状、攻撃性、麻痺 | 咬傷(唾液) |
特にジステンパーとパルボウイルスは致死率が非常に高く、ワクチンによる予防が極めて重要です。
子犬のワクチンスケジュール
標準的なスケジュール
子犬のワクチン接種は以下のスケジュールで行うのが一般的です。
| 時期 | 接種内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 生後6~8週齢 | 混合ワクチン(1回目) | ブリーダーやペットショップで接種済みの場合が多い |
| 生後10~12週齢 | 混合ワクチン(2回目) | 子犬を迎えてから最初の接種になることが多い |
| 生後14~16週齢 | 混合ワクチン(3回目) | 移行抗体の完全消失を考慮した最終接種 |
| 生後91日以降 | 狂犬病ワクチン | 法律で義務付けられている。市区町村への登録も同時に行う |
| 1歳(初回接種の1年後) | 混合ワクチン(ブースター) | 免疫をしっかり確立するための追加接種 |
| 以降毎年 or 3年ごと | 混合ワクチン+狂犬病ワクチン | コアワクチンは3年ごと、ノンコアは毎年が推奨される場合あり |
重要: 最終接種を生後16週齢以降に行うことが強く推奨されています。これは、生後16週齢になると母親からの移行抗体がほぼ確実に消失しているため、ワクチンの効果が最大限に発揮されるからです。2回目の接種で終わりにしてしまうと、移行抗体が残っていてワクチンの効果が不十分な場合があります。
ペットショップ・ブリーダーからの接種記録の確認
子犬を迎える際は、すでに接種済みのワクチンの情報を必ず確認してください。
確認すべき項目は以下の通りです。
- 接種日
- ワクチンの種類(メーカー名・製品名・何種混合か)
- 接種した動物病院名
- 次回接種の推奨日
この情報は「ワクチン証明書」として書面で受け取るのが一般的です。かかりつけの動物病院に持参し、残りのスケジュールを相談してください。
ワクチンの種類と選び方
コアワクチンとノンコアワクチン
犬のワクチンは「コアワクチン(全ての犬に推奨)」と「ノンコアワクチン(生活環境に応じて推奨)」に分類されます。
| 分類 | 対象疾患 | 推奨度 |
|---|---|---|
| コアワクチン | 犬ジステンパー | 全ての犬に必須 |
| コアワクチン | 犬パルボウイルス感染症 | 全ての犬に必須 |
| コアワクチン | 犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス2型) | 全ての犬に必須 |
| ノンコアワクチン | 犬パラインフルエンザ | ドッグランやペットホテル利用犬に推奨 |
| ノンコアワクチン | 犬レプトスピラ症 | 屋外活動が多い犬、田舎や山間部に住む犬に推奨 |
| ノンコアワクチン | 犬コロナウイルス感染症 | 多頭飼育環境の犬に推奨される場合がある |
混合ワクチンの種類
混合ワクチンは、1本の注射に複数の感染症に対するワクチンが含まれている製品です。日本で一般的に使用される混合ワクチンは以下の通りです。
| 種類 | 含まれる疾患 | 費用目安(1回) | 適した犬 |
|---|---|---|---|
| 2種混合 | ジステンパー、パルボ | 3,000~5,000円 | 最小限の予防で十分な室内飼い小型犬 |
| 5種混合 | ジステンパー、パルボ、肝炎、アデノ2型、パラインフルエンザ | 5,000~7,000円 | 室内飼いで散歩程度の犬 |
| 6種混合 | 5種+コロナウイルス | 6,000~8,000円 | 多頭飼育環境の犬 |
| 8種混合 | 6種+レプトスピラ2型 | 7,000~10,000円 | 屋外活動が多い犬、田舎に住む犬 |
| 10種混合 | 8種+レプトスピラ追加型 | 8,000~12,000円 | 山やキャンプに行く犬、自然環境に接触が多い犬 |
ワクチンの種類の選び方
どのワクチンを選ぶかは、以下の要素を考慮してかかりつけの獣医師に相談するのが最善です。
- 住んでいる地域: レプトスピラ症は地域によって発生率が異なる
- 生活環境: 室内飼いか、屋外活動が多いか
- 他の犬との接触頻度: ドッグラン、ペットホテル、トリミングサロンの利用頻度
- 旅行の予定: キャンプや山間部への旅行計画があるか
- 犬種・体格: 超小型犬はワクチンの副反応リスクがやや高いため、必要最小限のワクチンを選ぶことがある
一般的には、都市部の室内飼いの小型犬であれば5~6種混合、屋外活動が多い犬や山間部に住む犬であれば8種以上が推奨されます。
狂犬病ワクチン
法律上の義務
日本では狂犬病予防法により、生後91日以上の全ての犬に以下が義務付けられています。
- 市区町村への犬の登録(生涯1回)
- 狂犬病ワクチンの毎年1回の接種
- 鑑札と注射済票の装着
登録を行わない、またはワクチン接種を受けさせない場合は、20万円以下の罰金が科される可能性があります。
狂犬病ワクチンの接種時期
| 対象 | 接種時期 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 子犬(初回) | 生後91日以降、混合ワクチン最終接種から2~4週間後 | 注射費用2,500~3,500円+登録料3,000円+済票交付料550円 |
| 成犬(毎年) | 毎年4~6月の集合注射、または動物病院で随時 | 注射費用2,500~3,500円+済票交付料550円 |
混合ワクチンと狂犬病ワクチンの間隔
混合ワクチンと狂犬病ワクチンは同時に接種しないのが一般的です。両者の間には以下の間隔を空けてください。
- 混合ワクチン接種後 → 2~4週間空けて狂犬病ワクチン
- 狂犬病ワクチン接種後 → 1~2週間空けて混合ワクチン
ワクチン接種の費用まとめ
子犬の1年目に必要なワクチン費用の総額を計算してみましょう。
| 項目 | 回数 | 費用目安 | 小計 |
|---|---|---|---|
| 混合ワクチン(5種の場合) | 3回 | 5,000~7,000円/回 | 15,000~21,000円 |
| 狂犬病ワクチン | 1回 | 2,500~3,500円 | 2,500~3,500円 |
| 犬の登録料 | 1回 | 3,000円 | 3,000円 |
| 注射済票交付料 | 1回 | 550円 | 550円 |
| 初診料・再診料 | 3~4回 | 1,000~2,000円/回 | 3,000~8,000円 |
| 合計 | 24,050~36,050円 |
8種混合ワクチンを選択した場合は、混合ワクチンの費用が1回あたり2,000~3,000円ほど高くなります。
ワクチン接種前後の注意点
接種前の注意
- 体調が良いときに接種する: 発熱、下痢、嘔吐、食欲不振などの症状がある場合は延期する
- 激しい運動を避ける: 接種当日は落ち着いた状態で病院に連れて行く
- 前回の副反応を獣医師に伝える: 過去にワクチン後に体調を崩した場合は必ず申告する
- 予約を取る: 接種後の経過観察のため、午前中の来院が推奨される
接種後の注意
| 時間 | 注意点 |
|---|---|
| 接種直後~30分 | 動物病院内で待機し、急性アレルギー反応(アナフィラキシー)がないか確認 |
| 接種後~24時間 | 激しい運動やシャンプーは避ける。安静に過ごす |
| 接種後~48時間 | 注射部位の腫れ、発熱、元気消失などの軽い副反応がないか観察 |
| 接種後~2週間 | 免疫が十分に確立するまでの期間。他の犬との接触は引き続き控える |
ワクチンの副反応
ワクチン接種後に見られる副反応は、軽度のものから重度のものまであります。
| 副反応の程度 | 症状 | 対応 |
|---|---|---|
| 軽度(よくある) | 注射部位の軽い腫れ・痛み、軽い発熱、食欲低下、元気がない | 1~2日で自然に回復する。安静にして経過観察 |
| 中等度 | 顔の腫れ(ムーンフェイス)、じんましん、嘔吐、下痢 | 動物病院に連絡し、指示を仰ぐ。多くは抗ヒスタミン薬で改善 |
| 重度(まれ) | アナフィラキシー(呼吸困難、虚脱、急激な血圧低下) | 緊急事態。直ちに動物病院を受診する。接種後30分以内に発症することが多い |
補足: ワクチンの副反応は超小型犬(チワワ、トイプードルの極小サイズなど)で発生率がやや高い傾向があります。不安がある場合は獣医師に相談し、必要に応じて接種前にアレルギー予防薬の投与を検討してもらいましょう。
ワクチン接種完了前の散歩と社会化
散歩はいつから?
ワクチンプログラムが完了する(最終接種から2週間後)まで、地面に降ろしての散歩は推奨されません。未接種の犬が多く訪れる公園やドッグランは特に危険です。
ただし、ワクチン完了まで完全に外出を禁止すると、社会化の適齢期(生後3~14週)を逃してしまうリスクがあります。社会化とは、子犬がさまざまな人・音・環境に慣れる学習期間であり、この時期の経験がその後の性格形成に大きく影響します。
社会化と感染予防の両立
| 方法 | 感染リスク | 社会化効果 |
|---|---|---|
| 抱っこでの外出(地面に降ろさない) | 低い | 外の音・人・車に慣れる |
| ワクチン接種済みの犬との遊び | 低い | 犬同士の社会化 |
| パピー教室(ワクチン証明書必須の教室) | 低い | 犬・人への社会化。トレーナーの指導も受けられる |
| 自宅の庭での遊び | 低い | 外の環境に少しずつ慣れる |
| 公園やドッグラン | 高い | ワクチン完了まで避ける |
社会化期は生後14週齢頃に閉じ始めるため、感染リスクを最小限に抑えながら社会化の機会を確保する工夫が必要です。かかりつけの獣医師に相談し、お住まいの地域の感染症発生状況を踏まえてアドバイスをもらいましょう。
成犬以降のワクチン接種
子犬のワクチンプログラム完了後は、成犬以降もワクチン接種を継続する必要があります。
追加接種(ブースター)のスケジュール
WSAVA(世界小動物獣医師会)のガイドラインでは、以下が推奨されています。
| ワクチン | 追加接種の頻度 |
|---|---|
| コアワクチン(ジステンパー、パルボ、肝炎) | 子犬期の接種完了後、1歳でブースター接種。以降は3年ごと |
| ノンコアワクチン(レプトスピラ、パラインフルエンザ等) | 毎年接種が推奨される場合が多い |
| 狂犬病ワクチン | 法律で毎年1回(日本国内) |
ただし、日本国内では動物病院によってコアワクチンも毎年接種を推奨しているケースがあります。これは地域の感染症発生状況や個々の動物病院の方針により異なるため、かかりつけの獣医師と相談してください。
抗体価検査という選択肢
ワクチンの追加接種の要否を判断する方法として「抗体価検査」があります。これは血液検査で体内の抗体量を測定し、十分な免疫が残っているかどうかを確認する検査です。
- 費用: 5,000~10,000円
- メリット: 不必要なワクチン接種を避けられる。副反応リスクが高い犬に有用
- デメリット: 検査費用がかかる。抗体価が低い場合は結局ワクチンを接種する
よくある質問(FAQ)
Q1. ワクチンは生後何週から打てますか?
一般的には生後6~8週齢から接種を開始します。これは母犬からの移行抗体が減少し始める時期にあたります。ただし、母犬のワクチン接種歴や授乳状況によって移行抗体の量は異なるため、接種開始時期はかかりつけの獣医師に相談してください。ペットショップやブリーダーから子犬を迎える場合、1回目の接種は入手先で済んでいることが多いです。
Q2. ワクチンを打っていない犬と接触してしまいました。大丈夫ですか?
ワクチン未接種の犬が必ずしも感染症を保有しているわけではないため、接触しただけで直ちに危険とは限りません。しかし、感染のリスクはゼロではないため、子犬の様子(発熱、下痢、嘔吐、食欲低下、元気消失)を数日間注意深く観察してください。異常が見られた場合はすぐに動物病院を受診しましょう。今後はワクチンプログラムが完了するまで、接種歴不明の犬との接触は避けるようにしてください。
Q3. ワクチンの接種間隔がずれてしまいました。最初からやり直しですか?
多少のずれ(1~2週間程度の遅れ)であれば、最初からやり直す必要はありません。ただし、大幅に遅れた場合(1ヶ月以上)は免疫が十分に確立されない可能性があるため、獣医師に相談の上、追加接種の回数やスケジュールを再調整してもらってください。ワクチン接種は間隔が短すぎても長すぎても効果に影響するため、できるだけ推奨スケジュールに沿って接種することが理想です。
まとめ
子犬のワクチン接種は、命に関わる感染症から愛犬を守るための最も重要な予防医療です。生後68週齢から開始し、34週間隔で2~3回の混合ワクチンを接種し、最終接種は生後16週齢以降に行ってください。狂犬病ワクチンは法律で義務付けられており、生後91日以降に必ず接種します。
ワクチンの種類(5種、8種など)はお住まいの地域や犬の生活環境に応じて選択し、かかりつけの獣医師と相談の上で決めてください。接種後は24時間安静にし、副反応の兆候を観察することが大切です。
ワクチンプログラム完了前の散歩は控えつつも、社会化の機会は抱っこでの外出やパピー教室などで確保するバランスが重要です。子犬の時期に適切なワクチン接種を行い、健やかな成長の基盤を作りましょう。
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